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2006.05.21 (Sun)

『ハリー・ポッターと謎のプリンス』(上・下)

[著者]J. K. ローリング
[訳者]松岡佑子
[出版社]静山社
[初版発行]2006年5月17日

[感想等]
 ハリー・ポッターシリーズの第6巻。
 16歳になったハリー・ポッターは闇祓いになるのを目標とし、
N.E.S.Tレベルの勉強に取り組む。
 『魔法薬学』の授業では手に入れた古い教科書にあった
「謎のプリンス」が書き込んだ様々な調薬法や呪文に助けられる。
 果たして、その「謎のプリンス」とはいったい誰なのか?
 そして、宿敵ウォルデモートを滅ぼすことを決意したハリーに、
ダンブルドア校長は個人教授を始めるのだった。

 この巻も悲しく辛い別れがハリーを待っていて、
彼の運命の過酷さに今まで以上に心が痛む展開だった。
 しかし、ハリーやロン、ハーマイオニーの恋も複雑になり、
6年生としての学園生活や難しくなっていく授業の様子、
「生き残った男の子」から「選ばれし者」へと呼び名も変わり、
様々な出来事を乗り越えて成長していくハリーの姿など、
この巻も充分に読み応えある作品になっている。
 
 また、初めて登場する「謎のプリンス」の正体や、
ウォルデモートの生い立ちがようやく判ってきて、
いままで謎だったことが明らかになってみると、
今までの巻の様々な出来事が巧みな伏線だったのに気付き、
作者のストーリー構成の凄さ・上手さを改めて感じた。

 何よりも、ラストのハリーには逞しさと強さが感じられ、
これからのウォルデモートとの戦いの結末は、
悲しみでなく喜びで終わるのではないかとの期待を抱けたし、
新しく提示された謎の人物「R.A.B」の正体や、
様々な謎がまだ残っているし、次の巻がまた待ち遠しくなった。


ハリー・ポッターと謎のプリンス

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2006.05.07 (Sun)

『航路』(上・下)

[著者]コニー・ウィリス
[訳者]大森望 
[出版社]ソニー・マガジンズ
[初版発行]2002年10月10日

[感想等]
 認知心理学者のジョアンナ・ランダーは
コロラド州デンヴァーのマーシー総合病院で、
朝はER、午後は小児科で臨死体験(NDE)の科学的検証のため、
聞き取り調査を試みているものの、
死後の世界を肯定する臨死体験本作家の
モーリス・マンドレイクの次作のための聞き取り取材に邪魔され、
思うような成果が得られずにイライラしていた。
 そこへ、神経内科医のリチャード・ライトから、
ジテタミンという神経刺激薬による擬似的な臨死体験の
実験への助言・協力を求められる。
ジョアンナはその申し出を受け、
臨死体験をシュミレートする実験に参加するものの、
ボランティアの被験者達が次々と不適格などの理由で居なくなり、
彼女自身が被験者になり、擬似臨死体験をすることになる。
 そしてジョアンナが見たのは彼女の記憶の中にある、
意外な場所であり、それが何故か彼女は考え始めるのだが・・・。

 第3部までもある、400ページ以上の上下本なのだが、
臨死体験の謎とジョアンナが見たものは何なのかという興味で、
あっという間に最後まで読み切ってしまった。

 臨死体験の謎を架空のジテタミンという薬の擬似臨死体験で
追及しようとする設定も良かったし、
ジョアンナの臨死体験がジョアンナが以前の聞き取り調査で
聞かされた事柄を含んでいるという点、
痴呆状態になった高校時代の恩師などの
彼女の過去の人々を追いかけることになり、
ある意味では過去を追体験しているのかもしれない点、
ジョアンナが知った真実をリチャードに告げることが出来ない点、
なども、とても良く出来ている設定だし、
作品に表現されている臨死体験に対する著者の見解も
死後の世界の存在を肯定していないが、非常にユニークだと思えた。 

 また、臨死体験の謎を追求していくだけでなく、
過去と現在のジョアンナの周囲の人々を巻き込み、
それらの人々の人物の設定が魅力的で良く出来ているし、
様々な人生ドラマが繰り広げられる点が面白く感じられ、
感動的で心に残る作品になっている。
 主役のジョアンナはもちろんだが、その他の登場人物達、
ハンサムだが女心に疎く研究熱心なリチャード、
災害オタクの心臓病の少女メイジー、
ジョアンナの親友で気丈で世話好きなERの看護婦・ヴィエル、
痴呆症になったジョアンナの高校時代の英語教師ブライアリー、
叔父・ブライアリーを世話する悲しい過去を持つ女性キット、
などの人生もジョアンナの臨死体験で変化していくように
感じられる点が良く出来ていると思った。

 もちろん、当初は、有益な臨死体験が得られずにイライラする
ジョアンナの気持ちに合わせているのか、なかなか話が進まない。
 しかし、それも、ユニークな人物が多数登場していることと、
迷路のような病院の中を天敵のマンドレイクから逃げまわるジョアンナの
様子がユーモラスで楽しめて、あまり苦にならなかったし、
後になってみれば、色々重要な伏線が貼られていたことが
判るので、良く出来た仕掛けだと思えた。

 なお、ネタばれになってしまうが・・・。
この作品ではタイタニック号の悲劇が重要な要素になっているので、
アカデミー賞を取った映画「タイタニック」は観たことがある方が楽しめる。
 さらに言えば、映画の内容以上にタイタニック号の知識があって、
映画が不満だと思った、ジョアンナに共感できるような読者の方が
うなずける部分が多いかもしれないし、もっと楽しめると思う。
 また、その他にも、映画「フラットライナーズ」に言及したりもするし、
近年のハリウッド映画や俳優などを知っている方がニヤリと出来たり、
理解できる記述もある。
 ちなみに、私は以上の条件に当てはまっているので、この作品を楽しめ、
高く評価してしまっているのかもしれないということをお断りしておく。


航路(上)航路(下)

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