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2005.09.30 (Fri)

『モーダルな事象 桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活』

[著者]奥泉光
[出版社]文藝春秋 本格ミステリ・マスターズ
[初版発行]2005年7月30日

[感想等]
 東大阪の女子短大の助教授・桑幸こと桑潟幸一(くわがたこういち)
は『日本近代文学者総覧』での太宰治の執筆担当をもくろむものの、
結局、春狂亭猫介(しゅんきょうていねこすけ)という川柳作家や
太宰と親交があった童話作家・溝口俊平(みぞぐちしゅんぺい)等、
無名作家ばかりを親筆する羽目になる。
 が、それが契機となって、研修館書房の猿渡幹男から、
彼の発見した溝口俊平の未発表原稿の解説を頼まれる。
 その後、その溝口俊平の未発表童話集が出版されて評判になり、
それを発見したのが桑幸だと書かれたため、
猿渡の殺人事件や、童話集を発行した出版社・天竺出版の新城貴文が
殺されるという事件や、溝口俊平をめぐる謎に巻きこまれてしまう。

 この作品は桑幸の体験を桑幸側の側から描くだけでなく、
溝口俊平の本の前書きを書いたライター兼歌手・北川アキと
その元夫の諸橋倫敦(もろはしろんどん)が興味を持って、
素人探偵きどりで謎を追う様子が交錯するという構成である。
 素人探偵があちこち旅をして謎解きをしていくことや、
途中に週刊誌や新聞などの記事の形で、世間一般的な視点での、
事件を解説するような文章が入るのは良く出来ている。

 が、溝口俊平をめぐる出版関係者達の殺人事件だけでなく、
戦後すぐの瀬戸内海の島での小学生15人の遭難事件の話や、
怪しげなアトランティスコインやMD世界心霊協会なる宗教教団に関する話や
桑幸が見る夢か幻覚なのか良く判らない場面などもあり、
色々詰め込みすぎている感がしないでもない。
 また、素人探偵が都合よく事件に関係ある場所や人に遭遇したり、
桑幸と一緒に謎を解くという展開がない点が、
ミステリとしてはちょっと不満である。

 なお、タイトルの「モーダル」とはジャズのモードの形容詞形や
現実ではなく予測や反実仮想などの非事実の言語を様相論理学では
「モーダルな言語」ということなどからきているそうである。


モーダルな事象

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2005.09.25 (Sun)

『アキハバラ@DEEP』

[著者]石田衣良
[出版社]文藝春秋 
[初版発行]2004年11月25日

[感想等]
 ページ、タイコ、ボックスはそれぞれ精神的な障害を持つのだが、
ユイの運営する人生相談のサイトに出会ったことで友人になり、
コンピュータ関連の仕事で収入を得るようになっていた。
 その3人にイズム、ダルマを引き合わせて
ユイが急死してしまい、その遺志を受けるような形で、
ネットカフェの美少女・アキラを加えた6人が
「アキハバラ@DEEP」という会社を作り、
ネットアイドル・アキラのサイトを立ち上げる。
 最初はアイドルサイトとしての人気だけだったが、
新しい検索システムを開発し、無償での配布を始めたことで、
大手IT企業・デジキャピの中込に目を付けられ、
提携を申しこまれ、トラブルに巻き込まれてしまう。

 せっかく開発した画期的なAI型検索システムを
汚いやり方で盗まれてしまったからといって、
それを取り返すのにテロ的な騒動を巻き起こすというのは、
倫理的にはいかがなものかと思われる作品ではある。
 が、自分達の信念を貫こうとする者達が、
仲間との結束や様々な人の協力で目的を達しようとする姿や
世間的には弱い立場の者がそれぞれ自分に出来ることで、
大企業や強者に立ち向かっていく姿が印象的で、
パワーにあふれた作品になっているし、小気味良い。

 また、オタクなどの集まる秋葉原の雰囲気が興味深かったし、
ネット生命体が語る部分なども面白かった。
 PCのソフトの開発などに携わったり関心がある人には、
別な観点での感想を持てるのかもしれない。


アキハバラ@DEEP

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2005.09.23 (Fri)

『巨石神殿ストーンヘンジ』(上・下)

[著者]バーナード・コーンウェル
[訳者]井口智子
[出版社]ソニー・マガジンズ ヴィレッジブックス
[初版発行]2005年8月20日

[感想等]
 紀元前数千年を舞台に、ストーンヘンジという神殿の建造と、
部族や異母兄弟の争いを描いた歴史ロマン。

 ラサリンという部族の族長ヘンガルの長男・レンガーは
凶暴な男で、異民族の男を殺害し、その男が持っていた
黄金の飾りを巡って他民族との問題を引き起こし、
やがて、父の族長を殺し、長になってしまう。
 障害を持つ次男・カマバンは他民族の金属を利用し、
太陽神を巡る神殿を作るという夢に取り付かれ、
兄との対立で奴隷として異民族に売られた三男・サバンは
次男に救われ、神殿の建造を委ねられる。
 その異母兄弟の諍いといった人間の愛憎などが、
良く描かれていたと思われた。
 
 その他の登場人物達では、特に、
女呪術師や神にささげられ女神と称される女性などの
女性の登場人物が一癖ある興味深い存在として
描かれているように感じた。

 何より、考古学で判明した事実を元に描かれている、
ストーンヘンジの製作過程の描写や、
ストーンヘンジが作られることになった理由に、
冬が来ない暮らしを求めて、太陽神を祭ろうとするという
熱狂的な思いがあったという点などが面白かった。


巨石神殿ストーンヘンジ(上)巨石神殿ストーンヘンジ(下)

 

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2005.09.18 (Sun)

『バルーン・タウンの殺人』

[著者]松尾由美
[出版社]東京創元社 創元推理文庫
[初版発行]2003年12月26日

[感想等]
 人工子宮での出産が普通になった近未来で
あえて母体での出産を望む女性達だけが住む東京の第七特別区で
起こる犯罪事件を妊婦探偵・暮林美央(くればやしみお)が
解いていくという表題作『バルーン・タウンの殺人』など
全5篇の短編小説集。

 どの事件も妊婦達には常識なことなどが事件の鍵になるので、
出産経験のある人なら簡単に謎が解けるのかもしれないが、
登場人物の刑事・江田満莉奈(えだまりな)が未婚女性で、
わざわざ出産を選ぶ女性達が不可解に思いながら、
色々、出産や妊婦に関する知識を知っていくところが、
私と共通していて、とても面白かった。

 中でも『亀腹同盟』というシャーロック・ホームズの短編の
パロディのような事件が起こる話や、
妊婦ならではの密室トリックの『バルーン・タウンの密室』が良かった。


バルーン・タウンの殺人

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2005.09.17 (Sat)

『アイルランド幻想 ゴシック・ホラー傑作集』

[著者]ピーター・トレメイン
[訳者]甲斐萬里江
[出版社]光文社 光文社文庫
[初版発行]2005年8月20日

[感想等]
 盲目の音楽家が妻の薦めで静養のため引っ越した
アイルランドの田舎の古い修道院跡に建てられた家の庭にあった
ディアンケルト神ゆかりの悪を癒すという石を巡る『石柱』など
全11篇を含むホラー傑作集。

 ゴシック・ホラー集ということなのだが、
単に幽霊や妖精が絡んだ恐い話というより、
アイルランドという国が過去の歴史において、
イギリスによる過酷な植民地政策を受けたことや
大飢饉で人口が消・流失したことなどへの民の怒りや嘆きなどが
背景になっていたり、恨みが色濃く描かれている作品が多く、
非常に奥深い怖さを醸し出している。

 どれも興味深かったが、私が面白いと思ったのは『恋歌』という
現代の主人公が過去の時代に行ってしまい、
出会った女性との関わりから起こった殺人事件が、
伝説となって残ってしまったという作品である。
 その際録音した女性の歌う歌がカセット・テープに
残っているという点など幻想的だし、宿命観なども感じられて
良かった。


アイルランド幻想 ゴシック・ホラー傑作集

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2005.09.14 (Wed)

『暗黒館の殺人』(上・下)

[著者]綾辻行人
[出版社]講談社 講談社ノベルス
[初版発行]2004年9月5日

[感想等]
 九州の山奥、外界から隔絶された湖の小島に建つ、暗黒館。
中村清司(なかむらせいじ)という天才的で奇矯な建築家が
最後の補修に関わった館である。
 その持ち主、浦登(うらど)家の息子・玄児(げんじ)に誘われ、
館を訪問した学生・中也(ちゅうや)が遭遇した殺人事件と
18年前の事件の真相は浦登家の秘密にあった。
 
 火山の噴火の影響などで、外界から隔絶されてしまった館で
次々起こる殺人事件が、吸血鬼や悪魔信仰を思わせるような、
ダリアという名の初代当主の妻の遺言による不思議な宴や、
美しいシャム双生児の少女や早老症の少年の存在、
からくりや秘密の通路などのある広い館で起きるという、
設定がいかにもミステリらしい雰囲気を醸し出している。

 が、それだけでなく、登場人物の視点による記述の他に、
謎めいた視点での記述がなされているし、
どうも話がかみ合わない感じが付きまとう不思議さがあり、
何よりも登場人物の素性に関しても疑問が付きまとい、
上下各600ページ以上ある長い作品なのに、
一気に読んでしまい、結末でそれが解決したときには、
すっきりさせられ、その記述方法や構成に感心させられた。


暗黒館の殺人(上)暗黒館の殺人(下)

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2005.09.10 (Sat)

『参議怪死ス  明治四年、広沢真臣暗殺異聞』

[著者]翔田寛
[出版社]双葉社
[初版発行]2004年12月25日

[感想等]
 参議・広沢真臣(ひろさわさねおみ)の暗殺事件をめぐる物語。
 史実では、広沢の愛人・福井かねが逮捕され、一旦は犯行を自白したものの、
後に無罪を主張したため、裁判では無罪となり、真犯人が判らないまま
歴史の中に埋もれた事件である。

 明治2年に警察組織の明治政府樹立と共に設置された刑法官から、
犯罪捜査と逮捕を継承した刑務省逮部(たいぶ)と
刑法官観察司から警察業務を継承した弾正台(だんじょうだい)という
二つの警察機関が存在し、その軋轢の様子や、
主人公の逮部副長・佐伯謙太郎(さえきけんたろう)を始めとする
登場人物達が、幕末の戦乱(戊辰の戦)をまだ深い心の傷や
明治新政府内の様々な人間関係に影響を残しながら、
勢力争いに巻きこまれている様子が心に残った。

 もちろん、歴史に埋もれてしまった事件の真相に迫っている点も
興味深い作品である。


参議怪死ス 明治四年、広沢真臣暗殺異聞

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2005.09.05 (Mon)

星影丸の5・7・5 №9

 BlogPet の星影丸の口にした5・7・5を久しぶりに紹介します。

 №9

 kyu-575-009

 
 『原作に 噴火するのは ラインなり』

 相変わらず意味をなさない5・7・5なのですが、
「原作に 噴火する」というところに、
「芸術は爆発!」的な雰囲気を見出せそうだと感じませんか?
・・・ちょっと無理かな・・・(笑)

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2005.09.03 (Sat)

『天の前庭』

[著者]ほしおさなえ
[出版社]東京創元社 ミステリ・フロンティア17
[初版発行]2005年7月15日

[感想等]
 自動車事故で意識不明となり、9年間眠り続けて、
奇跡的に目覚めた中里柚乃(なかざとゆの)は記憶を失っていた。
 彼女が高校卒業卒業記念に友人達と作った日付入りボールペンが
高校の工事現場から見つかった白骨死体のそばにあったことを知り、
自分の過去を知りたくなった柚乃は、残されていた自分のパソコン日記から
高校時代の友人達との出来事、自分そっくりな少女・ユナとの出会い、
母が失踪前にドッペルゲンガーに出会っていたことを知り、
自分がタイムトラベラーではないかという疑問を抱くのだが、
判った真実によって、高校時代の友人達の輪へ戻ってゆく。

 オウム真理教を思わせる宗教集団のテロ事件などが描かれ、
ネットの掲示板での架空世界や、柚乃のパソコン日記の文章など、
どこまでが真実なのか、空想なのかわからない記述が多く、
ちょっと幻想的な雰囲気の記述が多い不思議な作品であった。

 何よりも、白骨死体の正体や事件の真相より、
主人公・柚乃の記憶の真実の追求が重視されていた点が面白かった。 
 特に、パソコンに残っていた友人達や父親や父親の恋人との
出来事をつづった日記の内容などに様々な伏線があったのが、
良かったと思う。


天の前庭

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2005.09.01 (Thu)

『小説 圓朝』

[著者]正岡容
[出版社]河出書房新社 河出文庫
[初版発行]2005年7月20日

[感想等]
 「怪談牡丹燈籠」で有名な明治の落語名人・三遊亭圓朝の
修業時代の前半生を描く昭和18年発表の小説の復刊。

 あちこちへ奉公へやられながらも、落語家になりたくて、
結局、その一念を貫き、2代目三遊亭圓生に弟子入りしたことがらや、
修業時代の苦労、ようやく「怪談牡丹燈籠」など自作の噺を完成し、
人気を呼び、これからという矢先に江戸が幕末の戦乱に巻き込まれ、
落語どころか明日が判らない時代になるところで小説は終わる。
 が、それからの圓朝の名人として大成する先行きが
充分感じられる作品となっている。

 私は圓朝については、「怪談牡丹燈籠」の噺や、
明治の名人だということ位しか知らなかったので、
修業時代の師匠との深刻な確執や、
そのことが新しい噺を生み出すきっかけを作ったことなどに
とても驚いた。

 そして何より、とにかく落語がやりたいのに、
硬い職業につかせたいという兄などの思惑から、
色々な仕事への修業奉公へ出るものの、しくじったり、
ついには病気になってしまった少年時代の圓朝の姿や
色々な周囲の悪意や好意の中、落語家として、
次第に成長していく姿に感動した。

 なお、小説の後に収録されている『附 我が圓朝研究』も
作者の圓朝への思いや速記の研究の様子が判り、
圓朝の創作した噺の解説が詳しく、良い資料になっていた。


小説 圓朝

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