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2006.10.29 (Sun)

『扉は閉ざされたまま』

[著者]石持浅海
[出版社]祥伝社 NON NOVEL
[初版発行]平成17年5月30日

[感想等]
 成城の高級ペンションに7人の大学時代の旧友が久しぶりに集まった。
 伏見亮輔(ふしみりょうすけ)は後輩の新山和宏(にいやまかずひろ)を
客室で事故を装って殺害し、外部からは入室できないよう現場を閉ざした。
 部屋から出てこない新山の安否を気遣う友人達から、必死で時間稼ぎする
伏見の犯罪は成功したかと思われたが、碓氷優佳(うすいゆか)だけは疑問を抱く。

 冒頭で殺人が行われ部屋が密室にされている様子が記され、
いつ密室の謎が解け、犯行のミスが暴露して犯人が追い詰められていくか、
また犯行の動機は何かを楽しむような倒叙ミステリなのだが、
犯人が時間稼ぎをしたり、密室のドアを壊して開けられないようにして、
事件発覚を遅らせ、殺人事件だと判らないように企むという設定が面白く凝っている。
 そして、犯行時刻を曖昧にしても、結局は科学捜査ですぐ判ってしまいそうだし、
アリバイを作るためとは思えないので、何故そこまで時間稼ぎをするのかが
非常に気になるという点が良く出来ている。

 が、残念ながら、犯人・伏見の犯行の動機がいまひとつ切実さに欠くし、
伏見や優佳のキャラクターや行動が理解しにくく、共感しにくい気がした。
 何より、ラストの決着の付け方がいまひとつ納得出来なかった。


扉は閉ざされたまま

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2006.10.28 (Sat)

『奇跡の人』

[著者]真保裕一
[出版社]新潮社 新潮社文庫
[初版発行]平成12年2月1日

[感想等]
 交通事故で8年間入院生活をしている相馬克己は事故以前の記憶を全く失い、
知識も小学生レベルの31歳である。脳死判定をされかけたが命をとりとめ、
赤ん坊のような状態から成長した彼は、「奇跡の人」と呼ばれていた。
 リハビリ生活を終えて退院し、亡き母の残した家に帰った克己は、
新しい仕事も見つけ、新たな生活に順応していけそうだったが、
どうしても失われた自分の過去が知りたくなり、
住民票から知った以前住んでいた博多へと出かけることにした。
 が、住民票の住所には彼と母は住んでいなかった事が判り、
悩んだ末に病院に忍び込んだ彼は古い自分のカルテを調べ、
自分が事故に遭ったのは東京だったと知り、やがて残酷な事実が判る。

 脳死状態寸前から回復し、彼の母の愛情や医師などの心配りで
無事にリハビリを終え、知能は劣り不自由な体で社会復帰していく
「奇跡の人」を赤ん坊から人生をやり直す克己の様子が綴られた
亡き彼の母親の手記や自立の様子で感動的に描いていく作品かと
思いながら読んでいたら、過去を追う話で、次々と判る事実に、
次第に暗い気分になっていくストーリー展開であった。

 そこまでして過去を知らずに新しい人生を生きれば良いのにと
何度も思わずにはいられなかった。 
 特に、過去を知りたいという自分の欲求を優先してしまい、
次第に、病院に忍び込んでみたり、嘘をついて仕事を休んだり、
昔の友人を利用したり、人々に迷惑をかけるようになる主人公の姿には
世間知らずの素直な青年が母親の深慮や愛情を失ってしまい、
堕落していく様子を見せられているようで、悲しいものを感じた。
 人間は改心して変わっていくことは出来ないのか、
どんなにやり直そうとしても過去は付きまとうのか、
そんな風に思わされてしまいそうな結末が残酷で残念過ぎる。


奇跡の人

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2006.10.25 (Wed)

『深淵のガランス』

[著者]北森鴻
[出版社]文藝春秋
[初版発行]2006年3月20日

[感想等]
 花師と絵画修復師、2つの顔を持つ男・佐月恭壱(さつききょういち)が主人公の、
大正末に活躍した洋画家・長谷川宗司の絵画の謎に迫る表題作『深淵のガランス』と、
続編『血色夢』を収録した作品集。

 絵画修復師として佐月恭壱が依頼された仕事から、
絵画の鑑定や売買・偽作製造などの裏の事情や関わる人々の思惑、
絵画にまつわる意外な真実が見えてくるのがとても興味深い作品集である。
 絵画の下に別の絵があり、それが今まで言及されたことのない、
作者の過去の真実につながるという表題作『深淵のガランス』も面白かったが、
染料の原料の原石の発掘場所の特定などの細かい点まで
こだわりを持って作業していく『血色夢』での洞窟壁画の修復・保存方法や、
佐月の熱中した作業の様子は、物珍しく感じ、楽しめた。
 が、洞窟壁画の修復中に、過去に佐月が手がけた佐々木画伯の絵画が
分割された作品であり、その争奪戦が発生しているという事件が絡み、
2つの事件が関連ありげに進行するようになっているのは盛り沢山過ぎ、
2つの作品に分けても充分楽しめそうなのにと、少々もったいなく感じた。
 
 なお、佐月に何度も電話を掛けてきて、手書きの手紙まで寄こす
謎の女性が登場するのだが、どうも作者の別シリーズ作品の女主人公の
「冬狐堂(とうこどう)」こと宇佐見陶子(うさみとうこ)ではと思ったのだが、
判明せずに謎として残ってしまって、気になっている。


深淵のガランス


<My Blog関連記事>『狐闇』

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2006.10.22 (Sun)

『ルパンの消息』

[著者]横山秀夫
[出版社]光文社 カッパ・ノベルス
[初版発行]2005年5月25日

[感想等]
 15年前の著者の処女作であり、第9回サントリーミステリー大賞佳作受賞作で、
未刊行だった作品である。
 平成2年12月、警視庁にもたらされた一本のタレ込み情報によると、
15年前に自殺とされた女性教師の墜落死が殺人事件であり、
犯人は教え子の男子高校生3人であるというのだ。
 時効までの24時間という短い時間で、事件を解明しようとする捜査陣は、
「ルパン作戦」という彼らの期末試験問題の入手計画を知らされ、
その計画中に起こった出来事、生徒や関係者たちのその後、
殺人事件の意外な真相を知ることになる。

 15年前の犯罪を時効寸前に暴くため、警察の捜査陣が
あれこれと動く様子、新聞記者との攻防などは、
作者の近年の作品を思わせ、巧みで大変興味深く感じられた。
 また、「ルパン作戦」を実行していこうとする男子高校生3人の動きが
その中の1人だった喜多芳夫(きたよしお)が警察官に自白した内容から、
時間を追って明らかになっていき、彼以外の当時の関係者たちの回想や、
その後の状況など様々な要素が絡むのも、とてもよく出来ていたし、
「ルパン作戦」計画自体が面白く感じられた。
 
 ネタばれになってしまうが、途中、「三億円事件」が話題に出てきて、
「三億円事件」を追っていた刑事が今回の捜査に加わっていたり、
「三億円事件」容疑者が女性教師の墜落死事件の関係者の中に居たことが、
実はこの作品の大きな伏線になっていたことが最後に判明したのには驚いたが、
少々無理があるかなという気もしないでもなかった。


ルパンの消息

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2006.10.21 (Sat)

『紅薔薇伝綺 龍の黙示録』 

[著者]篠田真由美
[出版社]祥伝社 ノン・ノベル
[初版発行]平成17年9月10日

[感想等]
 『龍の黙示録』シリーズ第五作目。
 不老不死の吸血鬼・竜緋比古に連れられ、13世紀イタリアの修道院へ飛んだ
修道士・セバスティアーノの意識はその時代の人物の中に入り込む。
 紅薔薇を抱いて殉教した少女の転生の謎と修道院で続く奇怪な死の謎。
 異端者&容疑者として捕らえられたセバスティアーノは真犯人や謎を解けるのか。

 シリーズの前の作品を読んでいた私は、この作で、
現代の鎌倉に住む不死の吸血鬼の伝奇小説が、歴史と場所をさかのぼり、
ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』のような作品になったのには、
かなり驚いた。
 もっとも、似ているのは中世の写字をしている閉鎖的な修道院で
連続して人が死ぬ事件が起こるという設定部分だけで、
結局は伝奇物らしい結末へ進んでいくのであるが・・・。

 しかし、その中世の場面の登場人物達の人物造型が良く出来ていて、
キリスト正教に異端として滅ぼされたカタリ派をめぐる話は、
とても興味深く楽しめた。
 また、自分の意識(魂?)だけ中世に行ってしまう経験をする
修道士・セバスティアーノは前のシリーズで出て来た時よりも、
人間的で親しめるキャラになっているのが良かったと思った。

 シリーズを全て読んでいないと判らない部分も出てくるかもしれないが、
これだけでも充分楽しめる作品になっているのではないだろうかと思う。


紅薔薇伝綺 龍の黙示録


<My Blog関連記事>『龍の黙示録』

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2006.10.18 (Wed)

『ぶぶ漬け伝説の謎 裏(マイナー)京都ミステリー 』

[著者]北森鴻
[出版社]光文社
[初版発行]2006年4月20日

[感想等]
 京都の風情や人情、味などを絡ませた謎をめぐる連作短編集。
 元広域窃盗犯の有馬次郎(アルマジロ~)は、今では足を洗い、
知る人ぞ知る京都の名刹・大悲閣千光寺で穏やかに寺男をしている。
 彼は、何故か前歴を知られていないはずなのに、
みやこ新聞の自称「エース記者」折原けいや
ボケミス作家ムンちゃんこと水森堅が持ち込んでくる
珍事件・難事件の謎解きを心ならずもさせられてしまう羽目になる。
 表題作『ぶぶ漬け伝説の謎』など6作収録。

 どの短編も京都の美味しそうな食材が描かれ、
有馬次郎がこっそり謎解きをしていく様子が面白い。
 京都人にはどのように感じられるのか判らないが、
他の地域に住む人間としては、京都の裏事情も知ることが出来、
謎解きも楽しめる、ユーモア一杯の作品集である。

 特に、京都で「ぶぶ漬けでも食べて・・・。」と帰り際に言われ、
本当にぶぶ漬けを食べて帰ると後でどんな悪口を言われるか判らないという
有名な話を元にした、表題作『ぶぶ漬け伝説の謎』は、
京都の裏伝説を取材中の神奈川のフリーライター・横田太が殺された事件で、
同じような題材を取材していて彼と出会っていた折原けいが疑われる。
 けいの疑いを晴らすため、横田の取材先を探す羽目になった有馬次郎が、
死体の胃の内容物から、意外な真実を突き止める話なのだが、
京都の食に関する話が興味深く、謎解きも楽しめる作品であった。
 
 なお、前作に『支那そば館の謎』という作品がある。
 前作も6篇からなる京の風情や味をからめた連作集で、
読んでいなくても『ぶぶ漬け伝説の謎』は充分楽しめるのだが、
私は、ムンちゃん&折原けいがドタバタしすぎているように思え、
前作の方が住職や有馬次郎がカッコよく活躍していた気がする。
 その点がちょっと残念である。


ぶぶ漬け伝説の謎 裏京都ミステリー 支那そば館の謎

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2006.10.15 (Sun)

『ストロボ』

[著者]真保裕一
[出版社]新潮社 新潮文庫
[初版発行]平成15年5月1日

[感想等]
 写真家としてのキャリアと名声を手にしてい50代の喜多川を主人公に、
40代、30代、20代へと彼の記憶をさかのぼっていくような形で、
展開される連作小説。

 第五章「遺影」の50歳の喜多川から始まり、
22歳の第一章「卒業写真」で終わるという形式が面白く、
人との出会いや彼の転機が、その時代の彼の視点で語られていくのが
とても良く出来ている。
 また、第一章まで読み進むうちに、様々な真実が見えてきて、
喜多川の人物像が深く判っていくようになるのが面白い。

 中でも心に残ったのは第四章の「暗室」。
 ヒマラヤで遭難した女性カメラマン・晴美との不倫と別れのいきさつと
同じように彼女と関係があった男からの依頼によって、
遭難前に彼女が撮った写真の現像を40代の喜多川が引き受ける話なのだが、
彼女の最後の写真から、彼女が無理な登山をしたのではないこと、
彼女の仕事ぶりの凄さが判り、また、引き受けるまでの葛藤の中で
喜多川との出会いや別れなどが、カメラマンとしての彼女の打算では
なかったことが判ってくるのが面白く感じられた。


ストロボ

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2006.10.14 (Sat)

『絹扇』

[著者]津村節子
[出版社]新潮社 新潮文庫
[初版発行]平成18年2月1日

[感想等]
 明治・大正・昭和という時代の社会の変化の流れの中で
白羽二重で知られる福井の絹織物史や機織の機械の進歩を絡ませ、
1人の機織の女性の半生を描かい作品。
 明治21年生れの中村ちよは、7歳で家業の機屋を手伝い、
そのために学校も満足に通えなかった。
 やがて、成長したちよは美貌と機織りの腕を見込まれ、
絹織物業の名家の大学卒の次男・西山順二に嫁ぎ、
分家となった夫の織物工場で献身的に働くことになる。
 夫の先進性と彼女の努力とで順調に会社は発展していくのだったが、
夫の隠し子の発覚、関東大震災による損害など様々な苦難がちよを襲い、
さらには夫が急死してしまう。

 今ならば男尊女卑と糾弾されるような、
幼い頃は家業を手伝うため、弟は学校に通えるのに、
自分は通えず、また、結婚してからは男の子が産めず苦しみ、
夫の隠し子の男の子たちを引き取るような、ちよの姿は痛々しい。
 でも、彼女は不幸だとは思わず、自分の機織の技術に対する誇りがあり、
同じように機織の技術を持ち、父亡き後の小さな機屋を守ってきた母親を
深く尊敬している点などに感銘を覚えたし、
姉妹が嫁いだ後に仲良く集まるような貧しいが暖かな彼女の実家や、
福井の機織に携わる女達の一生懸命な姿が心に残った。
 その反面、ちよに理解を示しているような夫が隠し子を作っていたり、
ちよの弟は大学で勉強したいと家出してしまうなど、
男達は身勝手で腹立たしく思われてしまった。

 夫の死、会社の倒産で娘たちと小さな機屋で再出発する
ラストのちよの姿は清清しく、健気で力強い。
 しかし、その後のちよの幸せな姿が描かれていない点が
気がかりであり、書いて欲しくも思えた。


絹扇

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2006.10.11 (Wed)

『翼とざして アリスの国の不思議』

[著者]山田正紀
[出版社]光文社 カッパ・ノベルス
[初版発行]2006年5月25日

[感想等]
 各国が領有権を主張している南洋の島・鳥迷島に
右翼青年のグループ『日本青年魁別動隊』の7人が上陸した。
 彼らしかいない島で、グループの人間への惨劇が連続する。
 わたし(瀬下綾香)は上陸早々にわたしが友人・伊藤紗莉を
崖から突き落とすのを目撃し、犯人と疑われてしまう。
 わたしが犯人なのか、それとも、わたしも狙われているのか?

 自分が友人を崖から突き落とすところを見ていたという
不可解な状況が語られ、語り手の綾香自身が狂気しているのか、
あるいは悪夢の中にいるのか判らないまま、島の中を逃げていて、
次第に犯人が判ってくる展開は興味深いと思った。

 が、冒頭のプロローグ的に語られた拳銃による殺人事件から、
唐突に綾香による語りの島での事件が始まるのにまず戸惑い、
煙に撒かれてラストへ進んでいくようなのが、もどかしい感じ。
 実は拳銃による殺人事件は島での行動に関わりがあるのだが、
それが判明するのも唐突という感じが否めない。
 そして、犯人の正体や登場人物たちの行動などに、
なんだか納得や共感出来ないまま、終わる作品であった。


翼とざして アリスの国の不思議

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2006.10.09 (Mon)

『十字の刻印を持つふたり アニタ・ブレイク・シリーズ1』

[著者]ローレル・K・ハミルトン
[訳者]小田麻紀
[出版社]ソニー・マガジンズ ヴィレッジブックス
[初版発行]2006年4月20日

[感想等]
 不死のモンスター「アンテッド」が合法化されていて、
ヴァンパイアや人狼や人鼠といった獣憑きが住んで居るという設定の
別世界のセントルイスを舞台にしたホラー風味のロマンチック・サスペンス。
 特殊な技能で死者を蘇生させる蘇生師(アニメーター)のアニタ・ブレークは
罪を犯したヴァンパイアを殺す処刑人という裏の顔も持ち、恐れられている
若い華奢な女性である。
 彼女は美貌のマスター・ヴァンパイアのジャン・クロードより、
最近起こったヴァンパイア連続殺人事件の犯人をつきとめる仕事依頼を受け、
断ったものの、友人の安全のため、仕方なく引き受けさせられる。

 ヴァンパイア処刑人・アニタと美貌のヴァンパイアのラブサスペンスだろうと、
軽い気持ちで読み始めたのだが、2人のラブロマンスや謎解きよりも、
ヴァンパイア、獣憑きやゾンビの闊歩するホラー的な部分や
アニタがヴァンパイア等と戦うアクション的要素が強い作品であった。
 特に、肝心のヴァンパイア殺人事件の犯人に関しては、
私は途中で判ってしまい、少々ガッカリした。

 良く出来ている点は主人公・アニタがスーパーウーマンではなく、
友人の身を案じたり、ジャン・クロードの魅力と葛藤する、
迷い、傷つく若い女性である点である。
 彼女に感情移入しながら、ホラーな世界を味わい、戦い、
謎を解くという展開がゲーム的ではない雰囲気がしたのが良い。

 実は本作は、1993年に初めて発表された時には、
モンスターが出たり、ヴァンパイアハンターの女性が活躍する
初めての珍しいロマンス作品だったということで、ラブサスペンスでなく、
ファンタジィとして出版されたそうだ。
 そして、今ではアメリカでは人気シリーズになり、何作も続編が出ているらしい。
 なるほど、ちょっとアニタとジャン・クロードのその後も気になるし、
続きが読んでみたくなる作品である。


十字の刻印を持つふたり アニタ・ブレイク・シリーズ1

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2006.10.08 (Sun)

『黒と茶の幻想』(上・下)

[著者]恩田陸
[出版社]講談社 講談社文庫
[初版発行]2005年1月10日

[感想等]
 学生時代の友人の男女4人・利枝子・彰彦・蒔生・節子が、
十数年ぶりに集まり、太古の森のある神秘的なY島への旅に出る。
 旅の途中、非日常的な話・日常的な何気ない会話を交わしながら、
それぞれの心の中には、共通の友人・梶原憂理との
封印したようになっていた思い出や出来事が蘇ってくる。
 そして、過去だけでなく、現在の各々の真実の姿が
次第に明らかになっていく。

 4人の人物の視点での4つの章から、旅の進む状況と過去、
自分の考えや他の人の人物像などが語られていくという構成が面白く、
また、次第に過去の憂理との関わりや彼らの関係と現在が
判ってくるのが興味深く、上下巻を一気に読んでしまった。

 各々が自分の都合の良いように解釈している過去、
忘れていること、他の人には語ってない事情があり、
何よりも、語り手本人は自分のことは一番判っていなくて、
謎めいている点が興味深かった。
 ストーリーが展開していくと、彼らが過去の出来事を
理解不能のままに放置していたり、誤解していたこと、
気持ちや言葉など他人に偽っていることがあるのに気付き、
憂理のその後を知ることで、謎を解いた気分になる。
 が、読者には、彼らにはまだ隠していることがあるのが判り、
登場人物達は結局、真相を知らずに旅が終わる点が少々怖く感じた。

 少し残念なのは、憂理が語ることのない点である。
 読者が判ったつもりになっている出来事も憂理の人物像も
もしかしたら真実ではないのかもしれないと思ってしまったので・・・。


黒と茶の幻想 (上)黒と茶の幻想 (下)


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2006.10.07 (Sat)

『忘却の船に流れは光』

[著者]田中啓文
[出版社]早川書房 ハヤカワSFシリーズ Jコレクション
[初版発行]2003年7月20日

[感想等]
 「世界が悪魔の襲来により滅びた後、生き残った者のために
主は聖なる壁に守られた5つの階層からなる閉鎖社会を作った。」
 と、いう経典を説く聖職者達の「殿堂」による厳格な支配が続く世界で、
神学士・清涼坊(あだ名がブルー)は、悪魔崇拝者の摘発に参加した日に、
修学者・ヘーゲルや保育者・マリアに出会ったことで、
「殿堂」の厳格な支配や経典の内容に疑問を覚えるようになる。
 一方、悪魔崇拝者の摘発で出会った大蟻象(だいぎぞう)司教は
ブルーのことを高く評価し、「殿堂」へ入れようとする。
 世界や「殿堂」の真実を知りたいというブルーの欲求によって、
ストーリーは意外な結末へと進んで行く。
 
 聖職者としての修行から離れ、マリアとの愛欲に溺れ、
「殿堂」や世界の真実を追いかけるブルーの姿を痛々しく感じながら、
壁の向こうはどうなっているのかに興味を引かれ、一気に読んでしまった。
 ラストで、大蟻象司教の企みが判った時、ブルーのいた世界の真実や
意外な人物の正体など、思いもよらない結末に驚かされ、
深い悲しみを感じさせられるSF作品であった。

 ただし、途中でTVアニメの『キャプテン・ハーロック』の主題歌が
引用されているのには、戸惑いを覚えたし、疑問に感じた。
 歌自体はもちろん良い歌なのだが、既成の歌を、
自分のSF作品に利用するのは、少々、安易なのではないだろうか?


忘却の船に流れは光

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2006.10.04 (Wed)

『天の鎖(あまのくさり) 第三部 けものみち』

[著者]澤田ふじ子
[出版社]中央公論新社 中公文庫
[初版発行]2006年2月25日

[感想等]
 第二部の「牛」こと「豊安」は第二部の終わりに、高野山で空海の幻を見、
「東のお爺」の死を見届けた後、うつけのようになっていて、
第二部の悲恋物語の夜登女が産んだ子供・赤麻呂が次の「牛」として、
第三部の主人公になって、物語が展開する。
 「牛」は10歳で父と同じように奴として東寺に引き取られ、
夜叉神堂で不思議な効験力をもつ唯空に仕えながら、
逃亡を図った僧侶を始末する唯空の闇の仕事を担うことになる。
 そして、やがて彼は高野山に貸し出されたままの
空海の残した『三十帖冊子』を東寺に取り戻すという特命が与えられる。

 第一部のように主役の少年の成長を追うようなストーリーだが、
奴として育っていく過酷な運命や寺の裏の仕事の様子が暗く、
夜叉神堂という場所や不思議に歳をとらない唯空が、
さらに不気味な雰囲気を醸し出していて、
前の2部以上に悲しみや苦しみに満ちている印象を受けた。

 また、すっかり空海は神聖化された存在になっていて、
残した書物まで聖典化されている点が興味深く、
東寺と高野山、他の密教宗派との争いをはじめとして、
奴として「牛」が仕える東寺の僧達の様子や行動などに、
宗教的な部分がより強く感じられる作品になっている気がした。
 その点が歴史物語としては趣は深く感じるのだが、
庶民史としては外れてしまっているようにも思えるのが
少々残念である。

 なお、前の第二部で登場して、不可解だった唯空の正体が判明し、
この3部作における彼の重要性が判り、驚かされるのだが、
さらにもっと深い謎が残ったように感じてしまい、
神秘的というか、煙に撒かれたような妙な読後感を覚えた。


天の鎖 第三部 けものみち


<My Blog関連記事>『天の鎖 第二部 応天門炎上』

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2006.10.04 (Wed)

ブログ日本一!100万円プレゼント

「FC2サポートです。
平素はFC2ブログをご利用頂き誠にありがとうございます。

なんと、月間アクティブユーザー数(ブログファン様調べ)で日本一になりました。
同サイトページビューは14億、月間アクティブユーザー数は26万人であることから、実質日本国内でアクセス数、利用者数ともに国内随一のブログサービスとなったと思われ、更に大きく成長を続けております。

引用:David the ...
ブログ日本一!100万円プレゼント

こういう、プレゼントがあるなんて!
ちょっと嬉しかったです♪

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2006.10.01 (Sun)

『天の鎖(あまのくさり) 第二部 応天門炎上(おうてんもんえんじょう)』

[著者]澤田ふじ子
[出版社]中央公論新社 中公文庫
[初版発行]2006年1月25日

[感想等]
 仏師として修行し、東国から60年ぶりに帰ってきた「牛」は、
「豊安(とよやす)」という少年に出会い、彼を弟子にし「牛」と名付け、
自分は「東のお爺」と呼ばれながら、東寺で仏像を刻むことになる。
 そんな中で、東寺の奴(やっこ)が良民の娘と恋に落ち、
それが元で、悲しい事件が起こる。

 いきなり、冒頭で東国から戻る年老いた「牛」が登場し、
第一部から一気に60年過ぎてしまい、空海も亡くなっている設定には、
とても驚き、最初は話の行方が良く判らないような感を受けた。
 が、物語が進むにつれ、「牛」の東国での60年が次第に判ってくる
仕掛けが、なかなか良く出来ていて面白いと思った。
 また、今回は身分制度を扱った奴(やっこ)・石根と良民の娘・夜登女の
悲恋物語なども絡み、第一部よりドラマチックな展開になっている。
 
 しかし、その反面、前の「牛」の「東のお爺」の存在感が大きく、
二代目「牛」(豊安)の影が少々薄く、残念な気がしたが、
ラストにびっくりする仕掛けが待っていて、
その印象を多少は払拭するのも、良く出来た構成なのかもしれない。

 なお、今回はタイトルに「応天門炎上」とあり、
伴善男らの起こした歴史的な事件が登場している。
 そして、事件関係者に仕えていた二代目「牛」(豊安)の兄などが
流刑のお供になり、都を離れることになるという悲劇も語られるが、
前作同様、庶民の眼から見た平安史という点は崩されていない。


天の鎖 第二部 応天門炎上


<My Blog関連記事>『天の鎖 第一部 延暦少年記』


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