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2006.11.29 (Wed)

『五郎治殿御始末』

[著者]浅田次郎
[出版社]中央公論新社 中公文庫
[初版発行]2006年1月25日

[感想等]
 表題作『五郎治殿御始末』の他に『椿寺まで』『箱館証文』
『西を向く侍』『遠い砲音』『柘榴坂の仇討』の計6篇を収録した、
幕末維新で旧幕臣や佐幕派であった武士たちのその後を描いた作品集。

 どの作品も明治維新で立場が変わってしまった人々を描き、
明治維新で幸せになれなかった武士階級の人々が
それでも武士らしい誇りを持っている点がとても悲しいが、
心打たれ、作者の同情的で優しい視点を感じさせられた。

 『西を向く侍』『遠い砲音(つつおと)』は、
明治政府による暦と時刻の改正を扱っている作品であり、
珍しい題材で興味深く感じられた。
 が、『西を向く侍』は幕府の元天文方に出仕していたが
新政府では出仕待機になっている主人公・成瀬勘十郎の
新暦の公布へ関与できないことへの失望や苛立ち、
公布方法の理不尽さに関する憤りが強く感じられ、
隣家の老婆への新政府の強引な土地召し上げなどと相まって、
新政府の傲慢さ、強引さを感じられる作品であった。

 一方の『遠い砲音』は馬術の技術があったので、
自分が近衛連隊に勤められたのを幸いと思う主人公・土江彦蔵が
新しい時刻の仕組みになれず四苦八苦している様子が
少々ユーモラスなのだが、実は旧藩主への忠義に、
息子の将来を犠牲にしてしまっている点を悩んでいる作品であり、
必ずしも新政府に従う人々が幸せではないことに気付かされ、
様々な制度に振り回される人々の姿が、切ない作品であった。

 『椿寺まで』は自分を拾って育て商売を仕込んでいる
商家の主人・小兵衛に従って初めて商用の旅に出た少年・新太が
主人公の話であり、当初は膝栗毛風の物語なのかと思って
読んでいたら、意外な展開になり驚かされたが、
私はこの6篇中では一番いい作品ではないかと思った。

 ネタばれになるが、『椿寺まで』は、旅の途中で
主人公・新太が、主人・小兵衛が元400万石の旗本であり、
旗本の名誉をかけ戦った上野の戦いで瀕死の重症を追ったこと、
その幼馴染だった新太の父は勝沼の戦いで死んでいて、
父の死を知り、新太と自害をしようとした母を小兵衛は救い、
武士を捨て商人になりきって、新太を育てていたと知る。
 そして、尼寺にいる母に一目会わせようとして
自分を旅に連れ出してくれたことに気付き、
母の手を振り切るように旅に戻っていく新太の姿に、
真実を知りながらも前を向いて生きていけそうな強さを感じ、
ほっとさせられて良かった。


五郎治殿御始末


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2006.11.26 (Sun)

『偽りの名画』

[著者]アーロン・エルキンズ
[訳者]秋津知子
[出版社]早川書房 ハヤカワ・ミステリ文庫
[初版発行]2005年3月31日

[感想等]
 サンフランシスコ郡美術館の学芸員クリス・ノーグレンは
米陸軍と契約した美術展の手伝いのため、ベルリンに赴く。
 展示される予定の名画は第2次世界大戦中ナチスに強奪され、
その後発見返還された作品であった。
 が、先にベルリンに赴いていた主任のピーター・ヴァン・
コートラントがその中に贋物があるという言葉を残し、死ぬ。
 ピーターの死を殺人だと感じたクリスは彼を殺した犯人と
贋物の絵がどれなのか探り始める。

 犯人やその動機などはそれ程意外でないものの、
ナチスによる絵の略奪やその返還、美術展の裏側や、
美術の贋物の鑑定などの部分が中々興味深い作品である。
 また、主人公が弁護士を間に挟み、妻との離婚を進めていて、
その条件などの交渉で、出張先にまで弁護士の電話が
追いかけてくる点などにアメリカ的な可笑しさがあったし、
学芸員らしくないクリスに、軍人らしくないグッチ少佐が絡み、
2人であれこれ探っているのが、探偵ごっこをしているように
感じられてしまうような、奇妙な面白さがあった。


偽りの名画

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2006.11.22 (Wed)

『女信長』

[著者]佐藤賢一
[出版社]毎日新聞社
[初版発行]2006年6月15日

[感想等]
 織田信長が女であったという発想を元に描かれた歴史小説。
 信長は実は御長(おちょう)という名前の女性で、
斉藤道三をはじめ、様々な戦国武将たちとの性的関係や
男とは違う発想で、天下統一を図っていくのだが・・・。

 信長が女であったというのはもちろん、虚構ながら、
そんなことはありえるのではないかと思われるような
史実として残される信長の言動や行動などとの合わせ方には
驚かされたし、面白く感じた。

 特に、エキセントリックな言動や行動性、
鉄砲や長い槍の使用や西洋的な考えや事物の導入といった先進性、
本妻の御濃との間に子供が生まれなかった点、
本能寺の変における死体喪失等の
信長という人物の生涯に残る様々な謎への回答として
男と違う女の発想や女性的なヒステリックな衝動による行動と
している点は良く出来ている気がした。

 が、性的関係で女を武器に周囲を味方につけるやり方は
男性として育てられた女性がやるのに無理があるような気がしたし、
女性であることを一部の人々しか知らないことや、
信長が御長としても生活をするという設定はありえないと思った。

 また、年をとった御長に対する御濃の辛らつな批評や
本能寺の変へ向かういきさつ、ラストの徳川家康と天海との会話に、
「所詮女性は・・・」的なものを感じさせられてしまい、
少々ガッカリさせられたのが、残念である。


女信長


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2006.11.19 (Sun)

『殺意・鬼哭』

[著者]乃南アサ
[出版社]双葉社 双葉文庫
[初版発行]2000年5月10日

[感想等]
 『殺意』は加害者・真垣徹の独白からなる回想により、
『鬼哭(きこく)』は死に逝く被害者・的場直弘の独白により、
同じ殺人事件を2つの立場で描いた2作品を収録している。

 他愛も無いと思われるような電話の一言から、
被害者に殺意を抱き、それを育てて
被害者を殺してしまい、理由を黙秘したまま刑に服し、
刑務所を出て行く加害者の心情が長々と回想される『殺意』と
死に逝く3分間ぐらいの被害者の心情や回想を描く『鬼哭』。
 設定されている時間の長さも、立場も大いに異なり、
登場人物の人間像も大いに違うのだが、それぞれに興味深く、
1つの殺人事件を表と裏から見ているような感じがして、
とても面白く感じられた。

 愛想の良い仮面を被り社会的に成功している加害者が、
些細なことから心の中で冷酷な殺人計画を育て、
淡々と実行してしまい、後悔も無いまま、自己分析し、
殺人を正当化する様子は非常に不気味で理解しがたかったし、
調子が良く奔放な男っぽい仮面を被っているものの、
そのいい加減さで落伍者となっている被害者が、
実は小心者であって、何故殺されるのか判らず、
様々な未練を抱いている情けない有様なのに、
人間らしく哀れであると同情を思えてしまい、
私には皮肉に感じられた。

 何よりも、人間の真の姿や、相互理解の難しさや、
殺意とは何かなど、様々なことを考えさせられ、
単なるミステリではない点が良かったと思う。


殺意・鬼哭


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2006.11.18 (Sat)

『落下する緑 永見緋太郎の事件簿』

[著者]田中啓文
[出版社]東京創元社 創元クライム・クラブ
[初版発行]2005年11月30日

[感想等]
 天才サックス奏者・永見緋太郎の活躍を描く、ミステリ連作集。
 幻のデビュー作である表題作『落下する緑』をはじめ、
タイトルに色を持つ『揺れる黄色』『反転する黒』『遊泳する青』
『挑発する赤』『虚言するピンク』『砕け散る褐色』の7作品を収録。

 ジャズミュージシャンを主人公にしているのに、
色に関するタイトルの作品ばかりであるのがちょっと面白いし、
作品の間に著者によるジャズレコード紹介があるのが変わっている。

 師から弟子へと受け継がれるクラリネットの秘密を扱った『揺れる黄色』、
消えた天才トランペット奏者の行方を探す話『反転する黒』など、
音楽がらみの作品などが多く、それぞれ面白かったが、
亡くなった国民的時代小説家の新作発見の謎を描いた『遊泳する青』が
池波正太郎を思わせる小説家が登場していて、私には特に楽しめた。


落下する緑 永見緋太郎の事件簿

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2006.11.15 (Wed)

『チョコ猫で町は大騒ぎ』

[著者]ジョアンナ・カール
[訳者]岩田佳代子
[出版社]ソニー・マガジンズ ヴィレッジブックス
[初版発行]2005年5月20日

[感想等]
 リーは夫と離婚し、伯母・ジャネット(ネッティ)を頼り、
テキサスからミシガン湖畔の小さな町ワーナー・ピアに越してきた。
 伯母が経営するこだわりのチョコレート・ショップを手伝っている彼女が
伯母特製のチョコを配達した先の、大物弁護士・クレメンタインが
伯母のチョコを食べて即死してしまう。
 死因はチョコに入っていた青酸カリだった。
 そこで、リーはチョコの無実を証明しようとするのだが・・・。

 証拠品らしい手袋を何気なく持って帰って忘れていたり、
言葉の言い間違えの多いおっちょこちょいの主人公・リーに
いらいらさせられるのだが、なかなか楽しめるコメディである。
 クレメンタインの元夫・ジョーがかつての町のスター的男性で
その彼とのロマンス的な部分も、まあ楽しめる。
 が、肝心の殺人犯とその動機などは、途中で察しが付いてしまい、
ミステリとしてはちょっと期待ハズレであった。
 軽く楽しいミステリ、ロマンス好きにはお勧めかもしれないが・・・。


チョコ猫で町は大騒ぎ

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2006.11.12 (Sun)

『クライマーズ・ハイ』

[著者]横山秀夫
[出版社]文藝春秋 文春文庫
[初版発行]2006年6月10日

[感想等]
 1985年、御巣鷹山に日航機が墜落するという事故が発生した。
 群馬県の地方新聞社「北関東新聞」の遊軍記者・悠木和雅は
衝立岩登攀を予定していて、翌日から休暇をとろうとしていたのだが、
全権デスクに任命され、登山どころではなくなってしまう。
 事故報道を巡る新聞社内の争いや、悠木の家庭の問題、
衝立岩に一緒に行くはずだった登山仲間の死などの様々な出来事を、
17年後、57歳の悠木和雅が衝立岩登攀をしながら回想していくような
構成で、物語は進んでいく。

 未曾有の被害者の出た航空機事故を扱っているが
航空機事故そのものの悲惨さよりも、
その報道を巡る新聞社の人間関係のゴタゴタや、
主人公・悠木の崩壊しかかっている家族の問題、
登山仲間の死と彼が残した言葉の謎などが詳しく描写され、
悠木の深刻な事情が中心になっている作品である。
 が、それがマイナスではなく、むしろプラスであり、
地方の新聞社の抱えている様々な事情や、
悠木や周囲の人々の人間像や行動が非常に興味深く、
真に迫るものがあり、とても良かった。
 何より、ラストに感動が出来、嫌な読後感が無いし、
読みやすい点には感心した。

 なお、私は未見だが、この作品はドラマ化もされている。


クライマーズ・ハイ

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2006.11.11 (Sat)

『ホームズ二世のロシア秘録』

[著者]ブライアン・フリーマントル
[訳者]日暮雅通
[出版社]新潮社 新潮文庫
[初版発行]平成18年10月1日

[感想等]
 ドイルのシャーロック・ホームズのパスティーシュ、
ホームズの息子セバスチャンが活躍するシリーズ2作目。
 ロシア情勢を探るようにチャーチルから依頼を受けて、
新聞記者を装い単身ロシアに潜入したセバスチャンは、
入国後すぐに皇帝の秘密警察に逮捕されてしまう。
 が、英国大使館のチャーチルから依頼された職員・ブラックに
助けられ、父や伯父の英国からの協力を受けながら、
前作で知り合っていたロシア皇子・オシロフとその娘・オルガや
スターリンと接触したセバスチャンはロマノフ王朝崩壊の噂を探る。

 第2作目の今回もチャーチルからの個人的な依頼で、
ロマノフ王朝崩壊寸前のロシアへ行くという設定も良く出来ていて、
その時代のロシアの有名人たちもさりげなく登場し、
歴史物としても楽しめそうな作品であった。
 何よりも、セバスチャンだけが危険な任務を果たすだけでなく、
伯父のマイクロフトも自分の立場の危機を味わったり、
父のシャーロック・ホームズやワトソンが裏で調査していくなど、
バックアップの人々の動きは前回より面白かったと思う。
 また、前回登場していた学生用語「ノーション」を
暗号にするという設定は今回もあるのだが、
前回ほど流れを邪魔する判りにくさは無くなっていて、ほっとした。
 
 ただし、スパイ小説好きには嬉しい作品なのだろうが、
犯罪事件を追う探偵としてのホームズが好きで読む人には、
今回も期待ハズレな作品ではないかと思う。
 シャーロック・ホームズ的な探偵はいまさら時代遅れとしても、
シャーロックのようなセバスチャンの活躍を見てみたかった。


ホームズ二世のロシア秘録


<My Blog関連記事>『シャーロック・ホームズの息子』(上・下)


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2006.11.08 (Wed)

『決断 警察小説競作』

[編者]新潮社
[著者]逢坂剛 佐々木譲 柴田よしき 戸梶圭太 貫井徳郎 横山秀夫
[出版社]新潮社 新潮文庫
[初版発行]平成18年2月1日

[感想等]
 警察小説、全6篇を収録した短編集。
 収録作は、偽ドル札をめぐる男と刑事の騙し合い『昔なじみ』(逢坂剛)、
新任の駐在と町の高校生失踪事件の意外な真実を描く『逸脱』(佐々木譲)、
庭の草木を傷つける事件を追うベテランと新米刑事『大根の花』(柴田よしき)、
アブナイ連中のパトカーからの逃避行『闇を駆け抜けろ』(戸梶圭太)、
ストーカー殺人を描いた『ストックホルムの埋み火』(貫井徳郎)、
ベテラン刑事が過去の誤認逮捕におびえる『暗箱』(横山秀夫)。

 中でも一番面白かったのは『暗箱』(横山秀夫)。
 もう解決している放火殺人事件で自白した犯人は
実は真犯人で無いというタレこみ電話に驚き、
思い悩む刑事の心情や行動が切実に描かれているし、
なぜ、犯人で無い人間が自白したのかという理由の重さも
心に残る作品であった。
 後、ストーカー殺人の犯人が犯行を犯すまでの心情を
よく描いている『ストックホルムの埋み火』(貫井徳郎)は
被害者の身元などのストーリー上の仕掛けも面白かったが、
引退した名刑事を父に持つ若手刑事のストーリーの部分が、
少々盛り込みすぎという感じがしたのが残念である。


決断 警察小説競作

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2006.11.05 (Sun)

『天使はモップを持って』

[著者]近藤史恵
[出版社]実業之日本社 ジョイ・ノベルス
[初版発行]2003年3月25日

[感想等]
 オペレータールームに配属された梶本大介と女性清掃作業員のキリコが
オフィス内に発生した様々な謎をクリーンにするミステリ短編8編を収録する。

 どの短編も奇抜な服装の若い清掃員のキリコの快刀乱麻振りを楽しめるが、
特に、大介と同期の女子社員の結婚式とマルチ商法勧誘社員の台頭から、
結婚に関する女心が浮かび上がってくる『心のしまい場所』など、
なかなか面白く感じた。
 何より、ラストの書き下ろし『史上最悪のヒーロー』は、
前の7編から時間が経過した後の大介が登場し、
キリコのその後も判るのだが、その意外さに驚かされ、
シリーズのまとめとしても面白かった。


『天使はモップを持って』(amazon.co.jp)

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2006.11.04 (Sat)

『陽気な幽霊 伊集院大介の観光案内』

[著者]栗本薫
[出版社]講談社 
[初版発行]2005年5月30日

[感想等]
 旧知の新聞記者・伊庭緑郎(いばろくろう)の口車にのるような形で、
「名探偵とゆく京都ミステリーツアー」のゲストになった伊集院大介。
 京都未体験のアトムくんこと滝沢稔と参加してみると忙しい観光旅行で、
やっとラストでメインのミステリーイベント開催地の千松寺に着いた時、
旅行会社の仕込みとは思えぬリアルな事件が続発する。
 伊庭は姿を消し、病気で倒れる老人、不倫カップルの失踪など、
どこまでが仕込みか現実かと、うろたえ始めるアトムくんや参加者達。
 慌てもせずに、嫌そうに距離を置く風だった伊集院大介が、
そんな中でついに動くのだが・・・。

 ネタばれになってしまうのだが・・・。
 京都を舞台にし、何かいわく因縁ありげな怪しいお寺で、
ミステリーツアーという形で嘘の犯罪が繰り広げられるうちに、
何かとんでもない実際の難解な犯罪事件が起こってしまい、
それを伊集院大介が見事に解き明かす作品なのではないかという
期待を抱いていた。
 が、見事に裏切られてしまったような、ミステリとも言い難い
お遊びっぽい作品でがっかりしてしまった。
 伊集院大介が最後の方でツアー関係者の犯罪を事前に止め、
推理らしいものを展開するのがこの作品の狙いなのかもしれないが、
それも、なんとなく唐突という感じが否めなかったし、
別に伊集院大介を出さなくても良い作品のような気がした。


陽気な幽霊 伊集院大介の観光案内


<My Blog関連記事>『女郎蜘蛛 伊集院大介と幻の友禅』


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2006.11.03 (Fri)

『「初恋の湯」殺人事件』

[著者]吉村達也
[出版社]実業之日本社 ジョイ・ノベルス
[初版発行]2005年12月25日

[感想等]
 文豪・島崎藤村ゆかりの信州小諸で起こった奇妙な殺人事件。
 民家の浴槽で、湯面に無数のりんごを浮かべて青年が殺されていたのだ。
 ふたごを妊娠して一週間後に退職する小諸署の杉山優花巡査部長は
容疑者となった、藤村の『若菜集』にちなんで名付けられた若緒と菜緒の
ふたごの女子高生の無罪を信じる。
 そこへ、東京から捜査一課の志垣警部が温泉旅行にやってくる。
 彼のアドバイスを貰いながら、杉山巡査部長は真犯人と事件の真相を
明らかにしようとするのだが・・・。

 りんごを湯面に浮かべて殺されていた理由、犯人の人物像、
ふたごの愛憎やその不思議さなどは、まあまあ面白く設定されていて、
タイトルの「初恋」も生かされている作品であると思った。

 しかし、温泉好きのシリーズキャラクター・志垣警部が登場するので、
シリーズを知っていて、彼とその相棒の和久井刑事の活躍を期待すると、
彼独りの旅行だし、事件のアドバイザー的な役割で終わってしまうので、
少々期待ハズレになるかもしれない。
 もっとも、志垣警部の奥さんが登場したりして、番外編的な楽しみを
感じることが出来るかもしれないが・・・。
 
 なお、少々ネタばれになってしまうかもしれないが、
私のとって期待ハズレだった点は、杉山巡査部長が途中で入院してしまい、
相棒の若手の三上刑事があれこれ調査をすることになる点だった。
 最後まで事件を担当したいという杉山巡査部長の熱意や意地が
物語の当初で伝わってきていたので、実際にはあまり動き回らず、
ベット上で指揮することで事件が解決してしまうのが残念に思えたのだ。


「初恋の湯」殺人事件


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2006.11.01 (Wed)

『この胸いっぱいの愛を』

[著者]梶尾真治
[出版社]小学館 小学館文庫
[初版発行]2005年10月1日

[感想等]
 『クロノス・ジョウンターの伝説』を原作とした映画『この胸いっぱいの愛を』の
原作者自身によるノベライズ作品。
 2006年、門司へ向かう飛行機に乗り込んだ人々の中で、
大好きだった年上の女性との別れ、自分を産んだ直後に死んでしまった母、
交通事故で亡くなってしまった息子・・・等、過去への未練を持つ人達が
同時に1986年の門司へ戻ってしまった。
 2006年の世界で何が起こって、過去へ戻ってしまったのか、
そして、1986年の世界で、もう一度、やり直すことができるのか。
 
 残念ながら、私は映画を観ていないので、
どこまで映画に忠実にノベライズされているかは良く判らない。
 が、レッドツェッペリンの「この胸いっぱいの愛を」の曲に触れながら、
少年時代の自分に出会い、大好きだった年上の女性と再会し、
その女性の病死を止めようとする鈴谷比呂志(すずたにひろし)を中心に
自分を産ぬことになっている母に出会う若者・布川、
息子の交通事故死を止めようとする吹原とその元妻、
盲導犬の死を看取れなかったことを悔やむ老婦人・角田、
そして、奇妙な機械を持った臼井などの遭遇する出来事が綴られ、
次々変わる場面展開は、映画ノベライズらしい作品である。
 過去であれこれ悪戦苦闘し、過去を変えていく登場人物達の姿や
その抱えた思いが感動的であり、面白いのはもちろんなのだが、
何故、飛行機に乗っていたはずなのに、過去へ行ってしまったのか
という設定の巧妙さとその驚愕的な事実が判る辺りが良かった。

 タイムスリップで過去を変えようとするのは原作の
『クロノス・ジョウンターの伝説』の設定そのものだが、
原作にあった「過去から戻る際に、現在には戻れず、
戻った分に比例した未来へ飛ばされるという設定になっていて、
愛する人を救っても、その人と現在の時間を共有できないし、
未来で会えるかも定かでない点」が無くなっているのが残念なのだが、
感動のラストになっている分、良かったのかもしれない。
 ただし、映画のラストはこの作品と違うそうだ。


この胸いっぱいの愛を


<My Blog関連記事>『クロノス・ジョウンターの伝説』

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