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2007.08.08 (Wed)

『方舟(はこぶね)は冬の国へ』

[著者]西澤保彦
[出版社]光文社 カッパノベルス
[初版発行]2004年8月25日

[感想等]
 勤めていた会社を辞め、失業中の十和人(つなしかずと)は、
ハローワークの前で奇妙な男に声をかけられ、仕事をしないかと
持ちかけられる。その仕事とは夏の1カ月の間、別の名前を名乗り、
見知らぬ女性と少女との仲のいい三人家族を装いながら、
盗聴器と監視カメラのある家に滞在するという不可解なものだった。
 仕事を請けた和人は別人として暮らしながら、次第に不思議な
経験をすることになるのだが・・・。

 お互いの素性も知らずに、三人家族として暮らすことになるという
奇妙な状態で、監視している人々や一緒に暮らす女性や少女の正体や
この仕事の目的を和人の立場で暴いていくのを楽しむ作品かと思ったら、
話は和人の嫌な過去が現在に影響を与える事件に発展して行ったり、
ラブストーリーやSF的になったりと、とても不思議な展開の作品で、
かなり戸惑った。

 が、夏を舞台にした不思議な物語として考えるとなかなか面白いし、
和人だけでなく、女性、少女が、嫌な人間ではなく、
実際の家族以上にお互いを思いやるような家族になっていくのは心地良く、
SF的にテレパシーが生じるのも有りかなと思わせるのが上手い。
 また、途中でなんとなく判ってしまうが、少女・レイナの過去の事件や、
女性・理香の過去などの話も上手く設定されていて楽しめた。

 ただし、最後のハッピーエンド的な部分は作り過ぎかもしれない。
 ひと夏の夢物語だけで終わらせても良かったのではないかという気もした。


方舟は冬の国へ

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テーマ : 読書メモ - ジャンル : 本・雑誌

タグ : 読書小説感想ミステリSF西澤保彦

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