11月≪ 2007年12月 ≫01月

12345678910111213141516171819202122232425262728293031
--.--.-- (--)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
EDIT  |  --:-- |  スポンサー広告  | Top↑
2007.12.29 (Sat)

『魂萌(たまも)え ! 』

[著者]桐野夏生
[出版社]毎日新聞社
[初版発行]2005年4月25日

[感想等]
 63歳の夫・隆之が心臓麻痺で急死し、関口敏子・59歳の平穏な人生は
一変してしまう。
 アメリカから8年ぶりに戻ってきた長男・彰之一家との同居問題や、
長女・美保と彰之との相続問題による争いが発生したり、
生前の夫には若くもない愛人がいて、別の生活を楽しんでいたことや
長い付き合いの女友達との関係などにも様々な問題が露になり、
悩み惑わせられているうちに、敏子は次第に変貌していく。

 初めのうちは、敏子に対して、主婦としての生活に安穏として、
今までなおざりにしていた問題のツケが回ったのだから仕方ないだろう
としか思えなくて、彼女の混乱ぶりには呆れてしまった。
 女友達の間のそれぞれの様々な本音や対立関係や立場の違い、身勝手さ
といった事実などに気が付いていないで、皆と仲良く付き合っているのだと
思っている認識の甘さ、夫の別の生活や愛人の存在に気が付かない暢気さ、
アメリカに行った長男へ親として厳しいことも言えないような有様に、
批判的な感情を抱いてしまったのである。
 そして、未亡人になった自分にちょっかいをかけてくる亡夫の友人に
恋心を抱き、オシャレに精出したりするに至っては、浮ついていて、
いい歳をした大人の女性としては情けないとしか思えなかった。

 が、敏子に同情はできなかったが、生活の変化に混乱する気持ちや、
いきなり自分独りで生きていくことが難しいことは理解できたし、
実際、いきなり夫に先立たれた女性にはこの話のような混乱や困難も
ありえるのかもしれないと、読み進むうちに次第に思えるようになり、
情けなさや様々な惑いの中からようやく自立できそうになる敏子の姿に、
最後には、ほっとすることが出来たのは良かった。

 また、何よりも1人残されることや老いへの心構えということなど、
自分も普段忘れていることを色々考えさせられた作品であったし、
登場人物達は、実際に居そうだと感じさせられるような人物が多く、
著者の人物造型には感心させられた。

 なお、この作品はTVドラマ化もされていたようだが、そちらは未見。


魂萌え !

スポンサーサイト

テーマ : 読書メモ - ジャンル : 本・雑誌

タグ : 読書 小説 感想 桐野夏生

EDIT  |  16:02 |  まあ面白いと思った本(☆3つ)  | TB(0)  | CM(4) | Top↑
2007.12.28 (Fri)

要素共感しなかった(BlogPet)

きのう、要素共感しなかったー。

*このエントリは、ブログペットの「星影丸」が書きました。
EDIT  |  08:36 |  星影丸の投稿  | TB(0)  | CM(0) | Top↑
2007.12.23 (Sun)

『花の下にて春死なむ』

[著者]北森鴻
[出版社]講談社
[初版発行]1998年11月15日

[感想等]
 ビアバー「香菜里屋」のマスター・工藤哲也が店に訪れる常連客の
様々な事件や謎をさりげなく解いていく、連作短編集。
 『花の下にて春死なむ』、『家族写真』、『終の棲み家』、
『殺人者の赤い手』、『七皿は多すぎる』、『魚の交わり』の6編を収録。

 表題作『花の下にて春死なむ』は孤独死した俳人・片岡草魚の部屋で
季節はずれの桜が咲いていたことの謎解きを、俳人仲間・飯島七緒による
偽名を使っていた草魚の過去の探索を絡ませていて、なかなか面白かった。

 また、最終話の『魚の交わり』ではまた草魚の過去が関わるし、
その他の短編の主人公たちも他の短編の脇役として顔を出すなど、
なかなか凝ったつくりの連作集だが、どれも気楽に読めた。
 そして、様々な人間の様々な人生や過去やトラブルを、
鮮やかに解き明かすマスターの洞察力はもちろんだが、
彼のさりげない優しさや心遣いが心に残り、こんなバーが
実際に身近にあったら良いなと感じさせられた。


花の下にて春死なむ


テーマ : 読書メモ - ジャンル : 本・雑誌

タグ : 読書 小説 感想 ミステリ 北森鴻

EDIT  |  14:26 |  なかなか良いと思った本(☆4つ)  | TB(0)  | CM(0) | Top↑
2007.12.22 (Sat)

『クリスマス・プレゼント』

[著者]ジェフリー・ディーヴァー
[訳者]池田真紀子
[出版社]文藝春秋 文春文庫
[初版発行]2005年12月10日

[感想等]
 どんでんがえしの結末が楽しめるミステリ短編集。16編を収録している。
 長編『ボーン・コレクター』でおなじみのリンカーン・ライムと
アメリア・サックスが登場する表題作『クリスマス・プレゼント』は書き下ろし。

 表題作『クリスマスプレゼント』は一旦解決したと思わせた誘拐事件が、
思いがけない側面を見せて、殺されそうになってしまう女性を、
ほんの些細なことから疑問を感じたリンカーン・ライムの示唆から、
アメリア・サックスが助け出す結末にほっとさせられる好編。
 
 その他、どの作品も話に結末が付いたと思った後に、
ひねりが効いた別の結末が待っている短編ばかりで、
最後まで気を抜けない思いをしながら読め、
してやられたという感じを味わえた。
 ただ、かなり辛らつな設定で、ハッピーエンドばかりではない
作品が多いのが、少々残念な気もしないでもない。

 特に面白いと思ったのは、負債のある夫の会社を相続した未亡人の話
『パインクリークの未亡人』で、会社経営には疎そうな南部女性の主人公が
夫の秘書や近づいてきた経営コンサルタントの男を信用して、
酷い目にあう話しかと思ったら、二転三転してしまい、ラストまで、
ハラハラ感を楽しめ、最後にはあっと言わされ、女の強さを感じさせた。

 また、ティーンエージャーの娘を溺愛する父と、娘のストーカーを
巡る事件を描いた『ひざまづく兵士』は、今時ありそうな事件という感じで、
興味深く感じたが、後味が苦かった。


クリスマス・プレゼント


テーマ : 読書メモ - ジャンル : 本・雑誌

タグ : 読書 小説 感想 ミステリ ジェフリー・ディーヴァー

EDIT  |  14:01 |  なかなか良いと思った本(☆4つ)  | TB(0)  | CM(0) | Top↑
2007.12.21 (Fri)

小説(BlogPet)

星影丸は、時代小説を推理しなかったよ。

*このエントリは、ブログペットの「星影丸」が書きました。
EDIT  |  08:27 |  星影丸の投稿  | TB(0)  | CM(0) | Top↑
2007.12.16 (Sun)

『神隠し譚』

[編者]小松和彦
[著者]松谷みよ子 平岩弓枝 高橋克彦 水木しげる 菊地秀行
   都筑道夫 三橋一夫 石井睦美 泉鏡花 杉浦日向子
   長尾誠夫 江戸川乱歩 柳田国男
[出版社]桜桃書房
[初版発行]2001年9月20日

[感想等]
 「神隠し」を題材にした作品を集めたアンソロジー。
 収録作品には、柳田国男の著作『山の人生』はもちろんだが、
幻想小説の『龍澤譚』(泉鏡花)や推理小説の『お勢登場』(江戸川乱歩)
といった名作や、『水泡』(菊地秀行)や『星の塔』(高橋克彦)などの、
SF的な現代作品、時代小説の『神かくし』(平岩弓枝)、
他の様々な文学作品だけでなく、『丸い輪の世界』(水木しげる)や
『神隠し二話』(杉浦日向子)といったマンガ作品までも収録している。

 どの作品も「神隠し」の様々な姿や解釈などを表現していて、
様々な味わいがあり、楽しめるアンソロジーであった。
 特に、民話的な味わいのある『神かくし』(松谷みよ子)や
柳田国男が登場する『早池峰山の異人』(長尾誠夫)が
私には面白く感じられたし、文学作品だけでなく、
マンガが含まれている点も、なかなか良いと思った。

 が、何よりも、著者の解説にあった、神隠しという形の失踪が、
現実の生活における様々な悩みを抱えた人間に対して、
希望の世界へにのいざないや一種の逃避の役割を果たしていたり、
解決できない殺人などの事件を隠し、隠された人々を諦めようとする
残された人々の解釈のひとつであるという指摘が興味深かったかもしれない。


神隠し譚

テーマ : 読書メモ - ジャンル : 本・雑誌

タグ : 読書 小説 感想

EDIT  |  00:52 |  なかなか良いと思った本(☆4つ)  | TB(0)  | CM(0) | Top↑
2007.12.15 (Sat)

『喪失』

[著者]カーリン・アルヴテーゲン
[訳者]柳沢由実子
[出版社]小学館 小学館文庫
[初版発行]2005年1月1日

[感想等]
 スウェーデンのストックホルム。32歳の女性ホームレス・シビラは
無実なのに連続猟奇殺人犯として警察に追われることになってしまう。
 地方の資産家の娘なのに、母親との子供の頃からの確執の末に、
18歳で未婚の母として、生まれてすぐの子供を手放す羽目になり、
ついには家出をして、ホームレスとなって自由を手に入れた、
主人公・シビラの深い心の傷を負った過去が、真犯人の追求と共に、
徐々に明らかになる過程が、興味深い推理作品である。

 最初はホームレスで、中年男性に食事とホテルの客室を奢らせる
ような彼女の卑しさや生活態度に共感を感じなかったものの、
現在まで続く彼女の母親の仕打ちの酷さに怒りを感じ、
苦難の中でも犯人探しをしようとする彼女の持つ強さや、
家を買うという大きな希望のため貯金する姿に好意を感じ、
行方のわからない息子への思いなどに同情を覚えたりして、
次第に、彼女の犯人探しを応援したくなっていった。

 また、彼女に協力する少年とのふれあいというほっとする要素は
あるものの、ホームレスの生活の厳しさや苦労はもちろんだが、
彼女に対する世間の誤解や敵意などが鋭く、生々しく感じられ、
絵空事でない気がして、重い読後感を残す。

 少し残念なのは、主人公のインパクトが強い分、猟奇事件の犯人が、
良く有りがちな精神を病む犯人であるように思えてしまう点であろうか。

 なお、この作品は2000年ベスト北欧推理小説賞受賞、
世界20カ国で翻訳されている作品であるそうで、
著者の大叔母は『長靴下のピッピ』のアストレッド・リンドグレン
であるとのことである。


喪失

テーマ : 読書メモ - ジャンル : 本・雑誌

タグ : 読書 小説 感想 ミステリ カーリン・アルヴテーゲン

EDIT  |  00:58 |  なかなか良いと思った本(☆4つ)  | TB(0)  | CM(0) | Top↑
2007.12.14 (Fri)

丸(BlogPet)

星影丸は、☆kakiで私設雑務助手っぽい引越しするはずだったの。

*このエントリは、ブログペットの「星影丸」が書きました。
EDIT  |  08:33 |  星影丸の投稿  | TB(0)  | CM(0) | Top↑
2007.12.09 (Sun)

『贈る物語 Wonder すこしふしぎの驚きをあなたに』

[編者]瀬名秀明
[出版社]光文社 光文社文庫
[初版発行]2006年11月20日

[感想等]
 瀬名秀明がセレクトした「すこし(S)ふしぎ(F)」な古典的名作から
ショートショート、コミック作品まで、ジャンルを超えた作品を収録。

 短編小説だけでなく、コミック作品『雪に願いを』(岡崎二郎)や
絵を元にしてショート・ストーリーを競作している作品
『絵の贈り物 画家から作家へ』(福田隆義 画、藤沢周平・皆川博子・
眉村卓・佐藤愛子・河野典生・ 著赤江瀑 著)などがあり、
今までに読んだことのある作品もいくつかあったが、
ちょっと変わった作品集として、どれもなかなか楽しめた。

 特に面白く感じたのは『ニュースおじさん』(大場惑)と
『江戸宙灼熱繰言』(六代目冥王右団次<いとうせいこう>)。

 『ニュースおじさん』(大場惑)はTVのニュース画面に、
さりげなく映っている不思議なおじさんの存在に気付いた夫婦が、
恐怖体験を味わうという作品。おじさんの謎は残るものの、
最後にほっとさせ、ユーモアも感じさせる作風が良かった。

 『江戸宙灼熱繰言』(六代目冥王右団次<いとうせいこう>)は
火星人の歌舞伎役者の評論をいとうせいこうが聞き書きしたという
形式で、歌舞伎の芸談口調で綴られる、ちょっと毛色の変わった
宇宙人もののSF作品。
 歌舞伎の知識がないと、パロディとしては楽しめないかもしれないが、
火星人が歌舞伎を演じるという発想だけでも充分、面白く感じるだろう。


贈る物語 Wonder すこしふしぎの驚きをあなたに


<My Blog関連記事>『贈る物語 Terror みんな怖い話が大好き』

  

テーマ : 読書メモ - ジャンル : 本・雑誌

タグ : 読書 小説 感想 SF

EDIT  |  11:00 |  なかなか良いと思った本(☆4つ)  | TB(0)  | CM(0) | Top↑
2007.12.08 (Sat)

『QED 河童伝説』

[著者]高田崇史
[出版社]講談社 講談社ノベルス
[初版発行]2007年2月6日

[感想等]
 QEDシリーズの第13作目。河童が住むといわれる川で、
左手首を切り落とされた遺体が発見され、さらに、その兄が
腕を切断された遺体となって発見された。
 製薬会社の新薬の売り込みに関わるらしい連続殺人事件は、
相馬野馬追祭に来ていた棚旗奈々達が出会った会社関係者の
一行にも関わってくるのだった。
 一方、奈々達と別行動で遠野まで行っていた桑原崇は
奈々達に合流し、河童の隠された真実を解き明かしていく。

 ここ数作、歴史の謎解きの方ばかりに重きが置かれ、
現実に起こる事件はいまひとつ、付けたし風だったし、
奈々と祟は登場しているものの、出番が少ない感じがして、
新登場人物・神山禮子中心の物語だったのに、失望していた。

 またもや、奇怪な死を遂げたのが前作の禮子のストーカー事件で
登場していた安岡良一・昭二兄弟ということで、前作同様、
彼女が中心となる物語展開なのかと思ったら、意外にも、
奈々の大学時代の知人・亘理(わたり)が安岡良一と同じ製薬会社に
勤めていて関わりがあるという形で、禮子は事件に直接関わらず、
製薬会社の裏側などを見せる事件も、なかなか面白く思えた。

 ただし、現実の事件の解明における崇の活躍を期待したものの、
彼は歴史に隠された、河童の正体や真実を解き明かす方に夢中で、
その点は、今回もまた期待外れであった。

 河童伝説に関しては、河童に関する言い伝えの様々な解釈が面白く、
八坂神社の家紋等との繋がりから、素戔鳴尊(すさのうのみこと)に
関連付ける解釈などは興味深く感じられた。
 しかし、、前作より関わっている平将門の話にまで絡めたり、
今回もまた、搾取され、虐げられた人々(たたら)の話になるのには、
少々、食傷気味な気がしないでもなかった。


QED 河童伝説


<My Blog関連記事>『QED~ventus~ 御霊将門』

  

テーマ : 読書メモ - ジャンル : 本・雑誌

タグ : 小説 感想 ミステリ 読書 歴史 高田崇史

EDIT  |  12:03 |  まあ面白いと思った本(☆3つ)  | TB(0)  | CM(0) | Top↑
2007.12.07 (Fri)

配属したかったみたい(BlogPet)

bookrackと、影響力も改善すればよかった?
でも、配属したかったみたい。

*このエントリは、ブログペットの「星影丸」が書きました。
EDIT  |  08:34 |  このブログに関する雑談  | TB(0)  | CM(0) | Top↑
2007.12.02 (Sun)

『あなたが名探偵』

[著者]泡坂妻夫 西澤保彦 小林泰三 麻耶雄嵩
   法月綸太郎 芦辺拓 霞流一
[出版社]東京創元社 創元クライム・クラブ
[初版発行]2005年8月25日

[感想等]
 作家7人による犯人当てミステリ短編集。雑誌『ミステリーズ!』掲載作品を
単行本化したもので、収録作品は『蚊取湖殺人事件』(泡坂妻夫)、
『お弁当ぐるぐる』(西澤保彦)、『大きな森の小さな密室』(小林泰三)、
『ヘリオスの神像』(麻耶雄嵩)、『ゼウスの息子たち』(法月綸太郎)、
『読者よ欺かれておくれ』(芦辺拓)、『左手でバーベキュー』(霞流一)。

 問題編という感じの作品の前半部分のみ、先に載せてあり、
解決編は後ろにまとめられているので、犯人当てを楽しみたい人には
考える時間を与えてくれる構成になっている。

 が、残念ながら、それ程、犯人やトリックの意外性に驚くような作品は
なくて、ちょっとした推理を楽しめる作品ばかりという感じがした。
『ヘリオスの神像』(麻耶雄嵩)、『ゼウスの息子たち』(法月綸太郎)
などは、犯人当てミステリらしく感じる、まずまずの作品だったが、
『蚊取湖殺人事件』(泡坂妻夫)、『大きな森の小さな密室』(小林泰三)
は、少々退屈な作品だと感じた。

『お弁当ぐるぐる』(西澤保彦)は、犯人が「何故、犯行現場の弁当を
食べて容器まで洗ったか」という謎が、ちょっと面白く感じたものの、
すぐ犯人が判ったし、犯行の動機などに少々無理がある感じがした。

 また、『左手でバーベキュー』(霞流一)は死体の左手を切り取って
焼いたかという点が、異常な感じで面白そうに思えたのに、
結局は、犯人像を含め、登場人物らの設定に現実味が薄く、
犯行動機などを含め、安易なサスペンスドラマのように感じられた。

 しかし、何よりも、ミステリとしてはアンフェアではないかと思い、
ガッカリさせられたのは『読者よ欺かれておくれ』(芦辺拓)である。
 名探偵を登場させて、名探偵者のパロディ風なのかと思ったら・・・
と、確かに欺かれたけれど、納得がいかないような気分が残った。
 

あなたが名探偵


テーマ : 読書メモ - ジャンル : 本・雑誌

タグ : 読書 小説 感想 ミステリ

EDIT  |  13:17 |  まあ面白いと思った本(☆3つ)  | TB(0)  | CM(0) | Top↑
2007.12.01 (Sat)

『ボトルネック』

[著者]米澤穂信
[出版社]新潮社
[初版発行]2006年8月30日

[感想等]
 恋人・諏訪ノゾミの事故死から2年。やっと弔いに行けるようになった、
高校生・嵯峨野リョウは事故現場・東尋坊の崖下に転落し、意識を失う。
 気が付いた彼は、何故か金沢市の浅野川のほとりのベンチにいて、
不審に思いながら、家に帰ると生まれなかったはずの姉・サキが居り、
自分が生まれていないことを知る。迷い込んだ別の世界と自分の世界、
2つの世界の間違い探しの末に判ったことは・・・。

 SF的な設定による物語は、辛い出来事が続く過去を経て、
感受性を鈍麻させている主人公・リョウが暗く諦めに満ちた自分と、
別世界の姉・サキの前向きな姿の引き起こした出来事の差を見せられ、
自分の存在を「ボトルネック」と感じていく展開が切ない作品である。
 途中、ノゾミの事故の真相などを突き止めるなど、ミステリ的な
面白さもあるものの、救いのないような暗い絶望感の漂う作品は、
軽く明るいノリや希望のある青春小説とはかなり違っている。

 タイトルの「ボトルネック」とは英語の「瓶の首 bottleneck」
「瓶の首のように細く、詰まりやすい」という意味に由来し、
コンピューターなどの用語ではコンピュータの処理速度や
ネットワークの通信速度の向上を阻む要素のことである。
 そして、一般的には「ボトルネック」は性能向上のために
「まず解決しなければならない部分」なのだが、この作品では
「まず排除しなければならない部分」という解釈をしている。
 そこに、主人公の気持ちや状況の改善を許さないような、
非情さを感じてしまい、私にはラストにも希望を感じられなかった。
 その点がかなり苦い後味を残し、残念に思えてならない。

 何よりも、過去を振り返るばかりのリョウに対しても、
自分が全ての間違いの原因だと思い、諦めてしまうだけで、
サキのように生きようと思えないのかと哀しく感じられ、
もう少し、救いを与えて欲しかったと思った。


ボトルネック

テーマ : 読書メモ - ジャンル : 本・雑誌

タグ : 読書 小説 感想 米澤穂信

EDIT  |  15:52 |  なかなか良いと思った本(☆4つ)  | TB(0)  | CM(0) | Top↑
 | HOME | 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。