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2011.10.30 (Sun)

『遥かなる未踏峰』(上・下)

[著者]ジェフリー・アーチャー
[訳者]戸田 裕之
[出版社]新潮社 新潮文庫
[初版発行]平成23年1月1日

[感想等]
 「なぜ登るのか?」という問いに「そこに山があるからだ」という
名言を残した登山家ジョージ・マロリー。
 彼の生涯をたどり、山頂へ到達出来たのかという謎が残された
最期の挑戦となったエベレストでの彼の姿まで描いた作品。

 プロローグとして、1999年にマロリーの遺体が発見された
場面から、物語は始まる。
 発見した登山家たちが、彼の衣服内のポーチに妻の写真が
無いことを喜ぶ場面に、私は何を喜んでいるのか判らず、
物語が進んで行き、その謎が判った時、かなり驚いた。

 子供の頃から、恐れを知らない子供だった彼のエピソードや、
愛妻ルースとの出会い、恋愛、そしてもちろん、登山家としての
彼のエピソードの数々は、どれもとても興味深く楽しめたが、
彼が歴史の教師だったことや、志願兵として戦場へ赴き、
負傷していたことなどは知らなかったし、妻との恋愛など、
登山家以外の部分の彼に関する記述が意外に面白かった。
 作品には、妻の写真のいきさつだけでなく、挿入されている
妻にあてた手紙、妻からの手紙などが、効果的に利用されている。

 エベレストへの挑戦中の過酷さの描写も凄いのだが、
そのメンバーの選抜試験の凄さの方が、何故か心に残った。
 さらに、同じような寒さとの戦いである南極探検に関して、
南極探検家・スコット大佐の講演会に参加したマロリーや
スコットの未亡人をマロリーの妻が訪れたりするエピソードが
挿入されているのが、出来すぎ感もあるが、面白かった。

 また、様々な探検隊を派遣していた王立地理学会という、
組織の格式ばった遣り方や偏狭さ、実際に探検に行かない
人物たちに関する、腹立たしさを感じる場面も多かったし、
高所登山に酸素ボンベを使うのは卑怯という危険よりも
スポーツマンシップを重視する当時の考え方や、身分や
男女の差別など、当時の社会の側面なども考えさせられたし、
一登山家の栄光や悲劇を描いただけの作品ではない気がした。



遥かなる未踏峰(上)遥かなる未踏峰(下)




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2011.10.08 (Sat)

『幻香(げんか)』

[著者]内田康夫
[出版社]角川書店
[初版発行]平成19年7月31日

[感想等]
 浅見光彦に届けられた見知らぬ女性からの芳香のする手紙。
 その文面に従い、栃木市の幸来橋に向かった彼は、
新進気鋭の調香師・戸村浩二が殺された事件に巻き込まれる。
 戸村の死、差出人の女性・国井由香との関わりから、
見えてきた10年前の天才調香師・国井和男の殺害事件。
 現在と過去の香水を巡る事件の真相に浅見光彦が迫る。

 過去の事件への後悔を抱いて、手紙に従った浅見光彦が、
事件に巻き込まれ、関わりがあるかどうかも判らなかった
過去の事件を掘り起こし、現在の事件と共に謎を解くという、
いつもながらの展開であるが、光彦が3人もの美女に
出会うという点や、華やかな香水が絡む事件という点は、
ちょっと珍しさもあるかもしれない。
 
 警察が見つけられなかったものを割と簡単に見つけて、
謎を解明する光彦の姿は、上手く出来過ぎの感もあるが、
あまり社会批判も多くなく、将来への希望のあるような解決で、
まずまずの終わり方だと思った。

 また、作中に出てくる香水は、実際にあったらステキだと
思ったし、光彦イメージの香水など、ファンは欲しいのでは?

 なお、この作品は、浅見光彦倶楽部の会員紙「浅見ジャーナル」にて、
読者とのリレー小説として書かれた『例幣使(れいへいし)街道殺人事件』
が原型としていて、雑誌「野生時代」に転載する際に書き改め
『フローラの函(はこ)』とした作品を、さらに改稿した作品とのこと。
 2作品のどちらも読んでいないので、どう変化したかは判らないが、
読者との合作から発展した作品が一億冊著作記念作品となっているのは
悪くない趣向かもしれない。



幻香




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