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2011.09.24 (Sat)

『闇色(あんしょく)のソプラノ』

[著者]北森鴻
[出版社]文藝春秋 文春文庫
[初版発行]2002年10月10日

[感想等]
 女子大生・桂木真夜子が卒論のテーマに選んだのは、
BF・洲内(すのうち)一馬の部屋で見つけた古い同人誌の
中にあった「しゃぼろん、しゃぼろん」という擬音のある
童謡詩を書いた夭折した女流詩人・樹来(きらい)たか子。
 自殺と思われていた、たか子の死や擬音の謎を巡り、
東京郊外の遠誉野市と山口を舞台に、たか子の遺児・静弥、
遠誉野の郷土史学家・殿村三味、末期がんの男・弓沢征吾、
たか子の伯父・浜尾竜一郎、刑事・洲内との関わりの中で、
起こった事件と、真夜子が知った真実とは・・・?

 偶然的な人間の出会いが多すぎるのが欠点な作品なのだが、
歴史的に誕生過程が解明されていない都市・遠誉野市という
架空のいわくありげな土地で事件が発生していくことで、
何か運命的なものを感じさせることで、納得出来るのが、
良く出来ているように思えた。

 また、様々な事件が展開していく章の合間に、
母の死んだ時の記憶を失っている青年・静弥の
記憶を思い出していくような「風景」という幻想的な
部分があるのがもどかしくもあり、不思議感を高める点や、
記憶に関する病気「ウィルニッケ脳症」が関係する点は、
好き嫌いが分かれそうな気がする。
 
 過去の詩人の死の謎は、おおよそ私の予想通りだったし、
様々な秘密を抱えている登場人物達の真実が明らかになる中、
最後に明らかになる登場人物ひとりの正体も察しがついたが
現代の静弥の周囲で起こる殺人事件の犯人に関しては、
ちょっと意外で、ヤラレタなと思った。

 「しゃぼろん、しゃぼろん」という童話の擬音の正体も、
きちんと明らかになる。
 だが、そのなんとも物悲しげな擬音に象徴されるように、
登場人物達の未来、特に静弥の将来を思ってしまうと、
なんだか悲しい気分の残る作品であった。

 なお、女流詩人・樹来たか子は、金子みすゞがモデルらしい。




闇色のソプラノ



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2011.08.27 (Sat)

『鷺(さぎ)と雪』

[著者]北村薫
[出版社]文藝春秋
[初版発行]2009年4月15日

[感想等]
 昭和初期の上流階級を舞台にして、お嬢様・花村英子(「わたし」)と
女性運転手・別宮(べっく)みつ子(「ベッキーさん」)が
周囲で起きる不思議な出来事の謎を解明していく、シリーズ3作目。
 表題作『鷺と雪』は英子の学友が銀座で撮った写真に、
台湾にいるはずの許嫁が写っていた謎を解く話。
 その他、『不在の父』『獅子と地下鉄』の計3篇が収録されている。

 謎解きの点では、貴族の失踪事件を扱った『不在の父』はまずまずだが、
昔も今もあった受験戦争をテーマにした『獅子と地下鉄』は少々物足りない。
 というのは、『獅子と地下鉄』に於いては、今は無くなってしまった
様々な獅子に関係しそうな建造物を知ることが出来たのは楽しかったものの、
東京にあった獅子像ということで、今でもあるものをすぐ思い浮かべてしまい、
聞いたことがあった話を思い出してしまい、すぐ判ってしまい、残念だった。

 『不在の父』に関しては、シャーロック・ホームズ作品にでもありそうな
ストーリーだなと思ったのだが、実際にあった事件を基にしているという点に、
ちょっとビックリした。

 前作『玻璃(はり)の天』でも、戦渦が迫り来るのを感じさせられたが、
今作は昭和9~11年を舞台にした作品たちであり、
特に表題作の最終話『鷺と雪』では、強く感じる幕切れが待っていた。
 が、ちょっと、作りすぎという感じのラストとも言えなくもない。
 何よりもその後の主人公やベッキーさんたちを気にしながら終わる点が、
シリーズ全部を読んで愛着があったせいか、辛い気がした。

 なお、ご存知だと思うが、この作品は第141回直木三十五賞受賞作である。



『鷺と雪』



<My Blog関連記事>『玻璃(はり)の天』

  

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2011.05.01 (Sun)

『不思議の扉 ありえない恋』

[編者]大森望
[著者]梨木香歩 椎名誠 川上弘美 シオドア・スタージョン
   三崎亜記 小林泰三 万城目学 川端康成
[出版社]角川書店 角川文庫 
[初版発行]2011年3月25日

[感想等]
 不思議なストーリーを集めた短編集の第3弾。
 主に時間に関する不思議を扱ったストーリーを集めた1・2弾とは、
少し趣が変わって、不思議なラブストーリー8編を収録している。

 収録作品は、梨木香歩『サルスベリ』、椎名誠『いそしぎ』、
川上弘美『海馬』、シオドア・スタージョン『不思議のひと触れ』、
三崎亜記 『スノードーム』、小林泰三『海を見る人』、
万城目学『長持の恋』、川端康成『片腕』。

 今回の作品でも面白かったのは、やはり時間が絡んだ
ラブストーリーであった。
 万城目学『長持の恋』は、信長のものと伝わる長持の中の
木切れへの書き込みを通じ、信長の時代の青年武士と文通が
始まるという、不思議なストーリー。
 結果は見えているのだが、最後にステキな驚きがあって、
ほろりとさせられた。

 小林泰三『海を見る人』は、時間の流れが違う村の少女に
祭りで出会い恋をするお話で、切なさが心に残った。

 時間は関わらないのだが、ちょっと面白かったのは
椎名誠『いそしぎ』。夫婦が引き裂かれてしまうことになる
奇祭のある土地の話で、淡々とした悲しみと幻想的な味わいが
昔の日本的な雰囲気を感じさせられた。

 シオドア・スタージョンと川端康成の作品は、
以前読んでいたので、私には新味が無かったのだけれど、
特に川端康成の作品はかなり変わった設定なので、
初めて読む人には驚きがあるかもしれない。




不思議の扉 ありえない恋



<My Blog関連記事>『不思議の扉 時間がいっぱい』

  

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2011.04.30 (Sat)

『不思議の扉 時間がいっぱい』

[編者]大森望
[著者]筒井康隆 大槻ケンヂ 牧野修 谷川流 
   星新一 大井三重子 フィツジェラルド
[出版社]角川書店 角川文庫
[初版発行]2010年3月25日

[感想等]
 時間を超えたストーリーを集めた短編集の第2弾。
 『しゃっくり』(筒井康隆 )、『戦国バレンタインデー』(大槻ケンヂ )
『おもひで女』(牧野修 )、『エンドレスエイト』(谷川流 )
『時の渦(うず)』(星新一 )、『めもあある美術館』(大井三重子 )
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(フィツジェラルド) の7編を収録。

 時間をテーマにした作品で、ユーモアのある作品、
ブラックや、ほろ苦い作品、ほのぼのする作品、
ちょっと怖い作品など様々なものが収録されている。

 個人的に興味があったのは、映画化もされている
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(フィツジェラルド)だったが、
インパクトは大きかったが、ちょっと重い気持ちになる作品であった。

 『時の渦』(星新一 )は淡々と語られていく、世の終わり的な話が
暴力や争いなどの無い上品な展開で進み、嫌な気分にさせない点は流石で、
オチはもちろん良く出来ていて、とても楽しめた。

 また、意外にも面白かったのは『エンドレスエイト』(谷川流 )。
 流行の涼宮ハルヒシリーズの作品で、今まで読んだことのない
涼宮ハルヒ物だったが、夏休みの終わりを扱ったストーリーが、
学生時代を思い出させるような1編で、楽しかった。

 そして、『めもあある美術館』(大井三重子 )は、
子供向きの童話なのだが、作者は推理作家の仁木悦子と知り、
こんな作品を書いていたのを知らなかったので、ちょっと驚いた。




不思議の扉 時間がいっぱい



<My Blog関連記事>『不思議の扉 時をかける恋』

  

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2011.03.20 (Sun)

『桜の園 神代教授の日常と謎』

[著者]篠田真由美
[出版社]東京創元社
[初版発行]2009年4月30日

[感想等]
 建築探偵・桜井京介でおなじみの神代宗教授を主人公とする
シリーズの2冊目。表題作『桜の園』と『花の形見に』という
中篇を2作収録している。

 表題作『桜の園』は神代教授の大学での友人である教育学部
教授・大島庄司の頼みで、前作にも登場した旧友・辰野と一緒に、
大島が40年ぶりに訪れた桜館とよばれる親類の家において、
昔の事件を明らかになっていく物語。
 『マクベス』を思わせる3人の魔女的な老女たちと
珍しい桜の植えられた古い館の『桜の園』といった、
演劇的な雰囲気の中、大島の忘れていた過去の見聞や、
過去の事件が次第に明らかになるのが、興味深い作品であった。

 『花の形見に』は神代教授のルーツに関する物語。
こちらは、京介や蒼、深春が登場し、建築探偵の番外編らしい
雰囲気で展開されていく。
 神代の亡き母の墓に供えられた恋歌や、消えた絵画の謎解きに、
幼き日の神代や姉・沙弥、家族の話も登場するので、楽しかった。
 そして、『桜の園』に登場したメイドの道子の抱いていた悩みも
ついでに解決されてしまうのはちょっと出来過ぎかも。

 建築探偵・桜井京介シリーズを知る人には、もちろんだが、
知らない人も、過去の時代を追憶するようなストーリーは、
楽しめるのではないだろうか。



桜の園 神代教授の日常と謎



<My Blog関連記事>『風信子(ヒアシンス)の家 神代教授の日常と謎』

  


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2011.02.19 (Sat)

『うさぎ幻化行(げんげこう)』

[著者]北森鴻
[出版社]東京創元社 創元クライム・クラブ
[初版発行]2010年2月25日

[感想等]
 飛行機事故で亡くなった義兄・最上圭一。
 フリーの音響技術者の彼が残した日本の音風景百選の録音と
義兄が自分を呼ぶ名前「うさぎ」宛に残されたメッセージに
謎を感じたフリーライターの美月リツ子は、その音源を訪ね歩く
旅に出ることにした。
 
 音源にまつわる様々な謎を解き明かしていく連作集。
 義兄に「うさぎ」と呼ばれていたのは自分だけでなく、
恋人がいたらしいということが、早々判ってしまって、
どうなるのだろうかと思っていたら、最後近くに、別の
どんでん返しがあって、ビックリした。

 音を巡る旅情と、リツ子が出会う人々、義兄・圭一との
エピソードなど、内容が盛り沢山だし、幻想的な部分も多く、
また、リツ子ではないもうひとりの「うさぎ」こと
成瀬彩子の視点で語られたりしているのに気が付きにくい、
混乱するストーリー展開のため、判り難い部分もあった。
 が、二度読んでみたら、上手く伏線が描かれているのも
判ったし、じっくり味わうのをおススメする。
 
 残念なことに、作者・北森鴻は2010年1月25日に急逝、
これが最後の作品になってしまった。
 好きな作家の1人だったので、もっと作品を読みたかった。
 改めて、この場でご冥福をお祈りします。



うさぎ幻化行(げんげこう)






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2011.02.06 (Sun)

『貴船菊の白』

[著者]柴田よしき
[出版社]祥伝社 祥伝社文庫
[初版発行]平成21年6月20日

[感想等]
 刑事になって初めての事件で訪れた京都の高雄の神護寺。
 そこの美しい紅葉の話をしたため、一緒に行きたがっていた
妻を亡くし、刑事をやめた男はその寺を15年ぶりに訪れた。
 実はそこは、犯人が自殺した苦い思い出のある場所だったのだが、
元刑事は、花を手向けるその犯人の妻に出会ってしまい、
事件の真相を知らされる・・・という表題作『貴船菊の白』など、
京都を舞台とした7つのミステリ短編を収録している。

 京都を舞台として、京都の四季や風物を背景に、
様々な出来事が起こるミステリで、どの作品も読みやすく、
人間心理・・・特に女性の心理などが、興味深く描かれている。
 表題作に出てくる女性や、その他の作品に登場する、
女性達の動向や心理は実際にありえそうで、怖くさえ感じた。
 
 その中で特に、京都の家での嫁と姑の確執を描いた
『銀の孔雀』は、なんとも嫌な味わいの展開であったが、
主人公の追われた嫁のささやかないたずらで終わる点が
ちょっと、ほっとさせられ、救いを感じさせられた。

 また、恋人に裏切られ、発作的に長距離バスに乗り、
年末の京都へ旅立った女性が出会った親切な男性の仕事と、
手に入れた幸せを描いた作品『一夜飾りの町』は、
後味が良く、ほっとする作品で、一番気に入った。



貴船菊の白


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