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2011.11.12 (Sat)

『暁英(きょうえい) 贋説・鹿鳴館』

[著者]北森鴻
[出版社]徳間書店
[初版発行]2010年4月30日

[感想等]
 作家・津島好一は鹿鳴館を題材にした新作を書こうとしていた。
 設計図さえ残っていない鹿鳴館は、謎の多い建物であり、
なかなか執筆が進まずに悩んでいた津島だったが、編集者に
海南潤一郎(うなみじゅんいちろう)という青年を紹介され、
鹿鳴館の裏門が逗子に現存していることを教えられ、
さらには、彼より出所を明らかにしない鹿鳴館の設計図の
コピーを贈られ、『小説 暁英』という作品を描き始める。

 暁英とは、鹿鳴館を設計したジョサイア・コンドルが、
風刺的な絵を描く日本画家・河鍋暁斎に弟子入りし、
貰った雅号である。
 この作品は津島が描いた作品という形で、コンドルの視点から
彼の日本での活動が描かれるという構造になっている。

 コンドルは、日本人建築家の育成や鹿鳴館を作るためだけでなく、
国際商社ジャーデン・マセソン社から、日本で姿を消してしまった
ウォートルスというアイルランド人建築技術者を探せという密命を
受けていたとして、その探索も描かれている。
 が、やはり、一番の謎は、鹿鳴館がどのような建築物だったのか、
コンドルはそういう意志を持って、鹿鳴館を設計したのかだろう。

 残念ながら、この作品は著者・北森鴻の急逝で、完結しないで
終わってしまい、津島の小説内のコンドルも鹿鳴館を建設中で、
コンドルの設計の意図は明らかにされていない。
 また、津島に設計図のコピーを渡した海南には何か訳あり気だが、
それも判らずじまいである。
 出来れば、著者に最後まで書く時間を与えて欲しかった・・・。

 しかし、ウォートルスの行方の謎は、一応解決しているし、
何よりも、鹿鳴館を建設したコンドルの人物像や、周囲の人々、
歴史上の偉人も、名も無きような人々までの描き方が良くて、
読み応えのある作品になっている。



暁英 贋説・鹿鳴館



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2011.10.30 (Sun)

『遥かなる未踏峰』(上・下)

[著者]ジェフリー・アーチャー
[訳者]戸田 裕之
[出版社]新潮社 新潮文庫
[初版発行]平成23年1月1日

[感想等]
 「なぜ登るのか?」という問いに「そこに山があるからだ」という
名言を残した登山家ジョージ・マロリー。
 彼の生涯をたどり、山頂へ到達出来たのかという謎が残された
最期の挑戦となったエベレストでの彼の姿まで描いた作品。

 プロローグとして、1999年にマロリーの遺体が発見された
場面から、物語は始まる。
 発見した登山家たちが、彼の衣服内のポーチに妻の写真が
無いことを喜ぶ場面に、私は何を喜んでいるのか判らず、
物語が進んで行き、その謎が判った時、かなり驚いた。

 子供の頃から、恐れを知らない子供だった彼のエピソードや、
愛妻ルースとの出会い、恋愛、そしてもちろん、登山家としての
彼のエピソードの数々は、どれもとても興味深く楽しめたが、
彼が歴史の教師だったことや、志願兵として戦場へ赴き、
負傷していたことなどは知らなかったし、妻との恋愛など、
登山家以外の部分の彼に関する記述が意外に面白かった。
 作品には、妻の写真のいきさつだけでなく、挿入されている
妻にあてた手紙、妻からの手紙などが、効果的に利用されている。

 エベレストへの挑戦中の過酷さの描写も凄いのだが、
そのメンバーの選抜試験の凄さの方が、何故か心に残った。
 さらに、同じような寒さとの戦いである南極探検に関して、
南極探検家・スコット大佐の講演会に参加したマロリーや
スコットの未亡人をマロリーの妻が訪れたりするエピソードが
挿入されているのが、出来すぎ感もあるが、面白かった。

 また、様々な探検隊を派遣していた王立地理学会という、
組織の格式ばった遣り方や偏狭さ、実際に探検に行かない
人物たちに関する、腹立たしさを感じる場面も多かったし、
高所登山に酸素ボンベを使うのは卑怯という危険よりも
スポーツマンシップを重視する当時の考え方や、身分や
男女の差別など、当時の社会の側面なども考えさせられたし、
一登山家の栄光や悲劇を描いただけの作品ではない気がした。



遥かなる未踏峰(上)遥かなる未踏峰(下)




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2011.10.08 (Sat)

『幻香(げんか)』

[著者]内田康夫
[出版社]角川書店
[初版発行]平成19年7月31日

[感想等]
 浅見光彦に届けられた見知らぬ女性からの芳香のする手紙。
 その文面に従い、栃木市の幸来橋に向かった彼は、
新進気鋭の調香師・戸村浩二が殺された事件に巻き込まれる。
 戸村の死、差出人の女性・国井由香との関わりから、
見えてきた10年前の天才調香師・国井和男の殺害事件。
 現在と過去の香水を巡る事件の真相に浅見光彦が迫る。

 過去の事件への後悔を抱いて、手紙に従った浅見光彦が、
事件に巻き込まれ、関わりがあるかどうかも判らなかった
過去の事件を掘り起こし、現在の事件と共に謎を解くという、
いつもながらの展開であるが、光彦が3人もの美女に
出会うという点や、華やかな香水が絡む事件という点は、
ちょっと珍しさもあるかもしれない。
 
 警察が見つけられなかったものを割と簡単に見つけて、
謎を解明する光彦の姿は、上手く出来過ぎの感もあるが、
あまり社会批判も多くなく、将来への希望のあるような解決で、
まずまずの終わり方だと思った。

 また、作中に出てくる香水は、実際にあったらステキだと
思ったし、光彦イメージの香水など、ファンは欲しいのでは?

 なお、この作品は、浅見光彦倶楽部の会員紙「浅見ジャーナル」にて、
読者とのリレー小説として書かれた『例幣使(れいへいし)街道殺人事件』
が原型としていて、雑誌「野生時代」に転載する際に書き改め
『フローラの函(はこ)』とした作品を、さらに改稿した作品とのこと。
 2作品のどちらも読んでいないので、どう変化したかは判らないが、
読者との合作から発展した作品が一億冊著作記念作品となっているのは
悪くない趣向かもしれない。



幻香




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2011.09.24 (Sat)

『闇色(あんしょく)のソプラノ』

[著者]北森鴻
[出版社]文藝春秋 文春文庫
[初版発行]2002年10月10日

[感想等]
 女子大生・桂木真夜子が卒論のテーマに選んだのは、
BF・洲内(すのうち)一馬の部屋で見つけた古い同人誌の
中にあった「しゃぼろん、しゃぼろん」という擬音のある
童謡詩を書いた夭折した女流詩人・樹来(きらい)たか子。
 自殺と思われていた、たか子の死や擬音の謎を巡り、
東京郊外の遠誉野市と山口を舞台に、たか子の遺児・静弥、
遠誉野の郷土史学家・殿村三味、末期がんの男・弓沢征吾、
たか子の伯父・浜尾竜一郎、刑事・洲内との関わりの中で、
起こった事件と、真夜子が知った真実とは・・・?

 偶然的な人間の出会いが多すぎるのが欠点な作品なのだが、
歴史的に誕生過程が解明されていない都市・遠誉野市という
架空のいわくありげな土地で事件が発生していくことで、
何か運命的なものを感じさせることで、納得出来るのが、
良く出来ているように思えた。

 また、様々な事件が展開していく章の合間に、
母の死んだ時の記憶を失っている青年・静弥の
記憶を思い出していくような「風景」という幻想的な
部分があるのがもどかしくもあり、不思議感を高める点や、
記憶に関する病気「ウィルニッケ脳症」が関係する点は、
好き嫌いが分かれそうな気がする。
 
 過去の詩人の死の謎は、おおよそ私の予想通りだったし、
様々な秘密を抱えている登場人物達の真実が明らかになる中、
最後に明らかになる登場人物ひとりの正体も察しがついたが
現代の静弥の周囲で起こる殺人事件の犯人に関しては、
ちょっと意外で、ヤラレタなと思った。

 「しゃぼろん、しゃぼろん」という童話の擬音の正体も、
きちんと明らかになる。
 だが、そのなんとも物悲しげな擬音に象徴されるように、
登場人物達の未来、特に静弥の将来を思ってしまうと、
なんだか悲しい気分の残る作品であった。

 なお、女流詩人・樹来たか子は、金子みすゞがモデルらしい。




闇色のソプラノ



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2011.09.10 (Sat)

『今宵、バーで謎解きを 』

[著者]鯨統一郎
[出版社]光文社 カッパ・ノベルス
[初版発行]2010年4月25日

[感想等]
 バー“森へ抜ける道”を舞台に、ヤクドシトリオの私立探偵・工藤、
ライター・山内、マスター・島の語る未解決事件を、
もう1人の常連・桜川東子が、ギリシャ神話を使って解き明かしていく。

 チーズとワインの出されるバーで、チーズやワインのウンチクが
語られ、そして、彼らの少年時代の話で盛り上がり、さらには、
ギリシャ神話を用いた桜川東子の未解決事件の解決を聞くという
7編の連作短編集である。

 チーズやワインのウンチクはともかく、期待していたギリシャ神話を
絡めた事件とその解決が、あまり面白くない気がしたのが残念である。
 ギリシャ神話自体に何か新しい解釈があるのかなと思ったが、
それがあまり無くて、事件も突飛さが少なく感じられた。

 一番面白かったのは、彼らの少年時代のサブカルチャーな部分。
遊びや給食など、同世代には懐かしさを感じさせるのでは。

 なお、この作品は桜川東子&ヤクドシトリオシリーズ 第3弾にあたる。
 第2弾『浦島太郎の真相』は未読だが、第1弾『九つの殺人メルヘン』は、
なかなか面白かったのを覚えている。
 が、その作品での桜川東子の精彩さが、今回は少し欠けているような気がした。



今宵、バーで謎解きを



<My Blog関連記事>『九つの殺人メルヘン』

  

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2011.08.27 (Sat)

『鷺(さぎ)と雪』

[著者]北村薫
[出版社]文藝春秋
[初版発行]2009年4月15日

[感想等]
 昭和初期の上流階級を舞台にして、お嬢様・花村英子(「わたし」)と
女性運転手・別宮(べっく)みつ子(「ベッキーさん」)が
周囲で起きる不思議な出来事の謎を解明していく、シリーズ3作目。
 表題作『鷺と雪』は英子の学友が銀座で撮った写真に、
台湾にいるはずの許嫁が写っていた謎を解く話。
 その他、『不在の父』『獅子と地下鉄』の計3篇が収録されている。

 謎解きの点では、貴族の失踪事件を扱った『不在の父』はまずまずだが、
昔も今もあった受験戦争をテーマにした『獅子と地下鉄』は少々物足りない。
 というのは、『獅子と地下鉄』に於いては、今は無くなってしまった
様々な獅子に関係しそうな建造物を知ることが出来たのは楽しかったものの、
東京にあった獅子像ということで、今でもあるものをすぐ思い浮かべてしまい、
聞いたことがあった話を思い出してしまい、すぐ判ってしまい、残念だった。

 『不在の父』に関しては、シャーロック・ホームズ作品にでもありそうな
ストーリーだなと思ったのだが、実際にあった事件を基にしているという点に、
ちょっとビックリした。

 前作『玻璃(はり)の天』でも、戦渦が迫り来るのを感じさせられたが、
今作は昭和9~11年を舞台にした作品たちであり、
特に表題作の最終話『鷺と雪』では、強く感じる幕切れが待っていた。
 が、ちょっと、作りすぎという感じのラストとも言えなくもない。
 何よりもその後の主人公やベッキーさんたちを気にしながら終わる点が、
シリーズ全部を読んで愛着があったせいか、辛い気がした。

 なお、ご存知だと思うが、この作品は第141回直木三十五賞受賞作である。



『鷺と雪』



<My Blog関連記事>『玻璃(はり)の天』

  

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EDIT  |  17:25 |  なかなか良いと思った本(☆4つ)  | TB(1)  | CM(1) | Top↑
2011.08.13 (Sat)

『哲学探偵』

[著者]鯨統一郎
[出版社]光文社 カッパ・ノベルス
[初版発行]2008年9月25日

[感想等]
 警視庁・特捜班の高島警視と久保主任は、難事件を専門に
扱っているため、解決の糸口すらつかめない。
 しかし、競馬場で出会った哲学好きで短歌趣味の馬券師が、
そんな事件を次々に推理していく。8つの短編連作集。

 警察官が事件のことを公共の場で話してしまうのはありか、
などという疑問はさておき、哲学と短歌が好きな馬券師が、
警察でも解明できないような事件を解き明かす・・・という
設定は面白い。

 駅のトイレの密室で殺された人が、直前に第三者に預けた
かばんに凶器が入っていた事件の謎など、なかなか面白い話も
あったものの、中にはそんなに難事件?という話もある。

 が、何よりも、出てくる短歌があまりなじみのない作者の
作品であることと、哲学の解説部分がいまひとつ面白くないし、
哲学がらみの馬にかけて大穴を当てている馬券師も嘘っぽく、
短歌と哲学を絡めて推理しているのが無理矢理な感じがして、
残念な作品になっている。



哲学探偵




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